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第14話
「ただいま」
「おかえりなさい!」
ガチャとリビングの扉が開き、朔夜さんが帰ってきた。ネクタイを緩めながら僕の隣に座ってくる姿はとても素敵。大人の男性って感じがして好きだなぁ。
「今日は……ごめん。もっと俺が早く助けていれば、あんな怖い思いしなくて済んだのに……」
「なっ、朔夜さんのせいじゃないよ!」
帰ってきた途端、申し訳なさそうに謝られる。なんで朔夜さんが悲しそうな顔するんだ。僕はもう大丈夫だから、そんな顔しないでよ……。
「もう、俺に触られるのも嫌だよね……。気を付けるようにするよ」
「……やだ」
「え?」
「そんなのやだ。僕、朔夜さんにぎゅってされるの好きだから……」
あの人たちと朔夜さんはまた違う。
朔夜さんの方が安心するし、僕を品定めするような気持ち悪い目で見てきたりしない。
それに、これから生活していく上で僕に触れないようにするなんて無理があると思う。
「……怖くないの? 俺も男だよ。律の体を、あいつらみたいにベタベタ触るかもしれないよ」
「怖くない。 朔夜さんなら平気」
そう言い切ると、朔夜さんは固まったまま動かない。どうしたんだろう。
千花ちゃんに教えて貰った甘え方で、朔夜さんにくっ付くと天を仰ぎ始めた。 あ、ダメだった?やっぱり男の僕がやっちゃダメなやつだったのか。
もう頭抱えちゃってるし、相当ダメなやつだったんだ……。
「律、あんまりそう言う可愛い事しないで。マジでやばいから」
「まじでやばい!?(そんなにキモかったってこと!?)」
「そう、本当に耐えられない」
「耐えられないほど!?」
そ、そんなに僕ってキモかったんだ……。もう止めとこ……。普通にしとこう。千花ちゃんには悪いけど、もう一生しないと思う。
会話は成り立っているが、話が噛み合っていなくて、お互い勘違いしたままだという事は二人とも知らないのであった。
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