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第16話
朔夜さんの服を着て、ご機嫌で車に乗り込んだ。
訳あって同居しているとはいえ、先生と生徒が一緒に買い物をしている所を目撃されるとマズいので、少し離れたショッピングモールに行く事にした。
運転している朔夜さんを横目で見て、ムフムフと笑う。ニヤけているのがバレないように口元はパーカーの袖で隠した。
このパーカーも朔夜さんの匂いがして落ち着く。ずっと嗅いでいたいなんて、変態みたいな事を思う。
「そのパーカー、変な匂いでもするの?ずっと嗅いでるけど」
「え!?違うよ! その……朔夜さんの匂いがして落ち着くから……」
やばい、僕変態だって思われない?
キモすぎて言葉も出ないのかもしれない。もう一生服を貸すのはやめようとか思われてるのかも……。
無言の朔夜さんを恐る恐る見ると、クスクスと笑いを堪えているようだった。いや、堪えきれてないけど。肩がプルプル震えてるもん。
「わ、笑わないでよ!」
「ふふっ、ごめんごめん。可愛いかったからつい」
「か、かわ……?キモいじゃなくて?」
僕の事が可愛い!?男だけど可愛いとか思うの!?もしかしてこれ脈あるんじゃ……!?
なんて思っていたけれど……。
「律は可愛いよ。犬みたいで」
「そっちか」
なんだ……。てっきり男の僕でもイケるのかと思ったのに、朔夜さんの『可愛い』は犬のようで可愛いという事らしい。
全然脈ないじゃん。むしろ犬ってペットだし。
まぁいいけどね。朔夜さんと一緒に居れるならこの際形なんてどうでもいい。
「布団は持ち帰ろうと思ってるから最後ね」
「はーい」
ショッピングモールに着き、先に家具を見に行く。そんなに高いやつじゃなくてもいいし、手頃な値段でいい感じのやつがあればいいな。
まずは机から。勉強机はもう要らないし、宿題とかテスト勉強できるくらいの小さな机でいいんだよね。あまり大きすぎても場所を取りすぎて邪魔だし。
「これにする」
「小さくない?もっと大きいのもあるよ」
「これでいいの。大きすぎても場所取るし」
「うーん、まぁ確かにね。じゃあこれと、あとは収納ケースか」
収納ケースが置いてある場所まで移動して、どういうものがあるのか物色する。
衣装持ちだから、たくさん入るほうが有難い。きっとこれからも増えて行くと思うし。
「これとかは?結構入りそう」
「本当だ。色も可愛い!……でも値段は可愛いくなーい……」
朔夜さんが指さしたのは、たくさんの引き出しがついた淡い水色の衣装ケースだった。僕も気になっていたけれど、提示されている値段を見ると買う気が失せる。
この値段を朔夜さんに払わせるなんて無理だ。今貯金いくらあったかな……。さすがに全て払ってもらうのはダメだよな。甘えすぎな気がする。
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