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第18話
「誰と来てんの?」
「えーと、それは……」
朔夜さんってなんて紹介すればいいの……!?家族……ではないだろうし、友達でもないし、恋人でもないし……。あれ?分かんないぞ。
僕がうーんと考えていると、男性は僕が誰かと来ているのが嘘だと思ったらしく、ククッと笑われた。友達でもないのに腰に手を回してきて、グッと引き寄せられる。
「やっぱ嘘じゃん。楽しませてあげるよ、お嬢ちゃん」
「は?僕、男なんですけど」
「それも嘘でしょ?」
「嘘じゃないですけど」
なんと男性は僕を女の子だと思っていたらしい。納得した。なぜ男の僕を誘うのかと思ったら、女の子と勘違いしていたのか。
それなら僕が男と分かれば解放してくれるだろう、と安心していたのに、顔をじっと見つめられる。
「本当に男?こんな綺麗な顔してんのに?」
「はい」
「……いや、俺は大丈夫。君なら男でもイケる気がする」
「……マジ?」
「マジ」
やべぇ奴だった……。男でもイケるなんて予想外。てっきり男だと分かれば解放してくれると思っていたのに、逆に面倒なことになってしまった。
どうしようかな、と考えているとニコニコと笑顔を浮かべた朔夜さんが戻ってきた。いや、口は笑っているが、目は笑っていない。
お、怒ってる……?なんで!?
「律。何してんの」
「な、何って……」
「その人は?随分親しげだけど……」
僕と男性を交互に見て尚も笑顔だが、目つきは怖い。
その目で人殺せそうだよ……。怖い……。
男性は僕の腰に回していた手をパッと離して距離を開ける。ちょっと手が震えていたのを僕は知っている。分かるよ、だってめっちゃ怖いもん……。
「あー、もうこんな時間か!早く家に帰らないと!」
精一杯の演技で、男性は去っていった。すごい棒読みで笑っちゃいそうになったけど、朔夜さんの冷たい目で見られて固まった。
「さ、朔夜さん……ごめん……」
「……はぁ。全く、少し目を離しただけなのに。あぁいうのは断らないと」
「断ったよ!僕のこと女の子と勘違いしてたみたいで、男だよって言っても全然引き下がらなくて……」
こんなの言い訳にしか聞こえないだろうけど……。僕がもっと抵抗すれば、諦めてくれたのかもしれない。でも結構はっきり断ったと思うんだけどな……。
しょぼくれている僕の頭を撫でて慰めてくれる。
「次からは気を付けて」
「……はい」
許してもらえたようだ。次からはちゃんと断ろう!さっきよりももっとちゃんと断わろう!
まぁ僕は朔夜さん以外の男に興味無いからね。
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