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第19話
それからショッピングをして、今は昼食を食べようとハンバーガーショップに来ている。
僕が変な服ばかり持ってるから、新しい服も買ってもらった。
せめて昼食は安く済ませたいと思い、ハンバーガーショップを選んだのだ。
安いのに美味しいし、中学生の頃はよく食べていた。僕の体はカップ麺とハンバーガーで出来ていると言っても過言ではない。
「こういうのあまり食べた事ないんだよね。注文の仕方もイマイチ分かんない」
「そうなの!? じゃあ僕が注文してくるから何にするか決めて!」
僕が役に立てるチャンスが来た!サラッと注文して、「律すごい!」と言ってもらえるように頑張る!
土曜日なだけあって店内はそこそこ混んでいた。空いている席に座り何にするか決めていると、何だかすごい視線を感じる。みんな朔夜さんの事を見ている。かっこいいイケメンが入店して来たらそりゃあ見てしまうだろうけど、なんだか複雑な気持ちだ。
「律のオススメはなに?」
「オススメか……。僕が好きなのはてりやきバーガーなんだけど、この新作のやつも気になる。これ絶対美味しいやつ!」
「へー、じゃあ俺が新作にするから、律はてりやきにしなよ。半分こしよ」
「なるほど!朔夜さん頭いいね!」
「そうでもないよ」
僕は度が過ぎたバカなのだが、そんな僕をバカにせず付き合ってくれるところすごく好き。
注文をして、ハンバーガーの乗ったトレイを持って席に戻ると、朔夜さんの周りに女の子集団が集まっていてびっくりした。
何なのこれ!?僕座れないじゃん! 朔夜さんも抵抗しないんだ……。まぁ、そうだよね。女の子に囲まれたら嬉しいもん。……僕も女の子だったら、あんな風に腕組んだり出来たのかな……。
と言うか、朔夜さんと腕組むなよ!なに腕組んだだけでドヤ顔してんの!僕なんて毎晩抱き締められて眠ってるからね!はい僕の勝ち!!
勝手にイライラして、勝手にマウントを取って、勝手に勝った。
「あ、律ありがとう。ごめんね、連れが戻って来たから避けてくれる?」
「うわ、連れがいるってマジだったんだー!しかも男じゃん!男なら問題なくね?」
「本当だー。彼女かと思ったのに男かよ。しかも子どもだし。私たちと遊んだ方が楽しいんじゃない?」
クスクスと指さして笑われ、胸がズキンと痛む。なんで僕こんなに貶されてるの?何か悪いことしたっけ?
お姉さんたちみたいなハデハデメイクして露出多い服着てるのより、僕の方が何倍も可愛いし!
なんて言い返せるはずもなく。
あー、どうしよう。
なんて考えていると、グイッと肩を引かれ、腰に手を回された。
「俺の大切な人を傷付ける人とは遊べない。俺はこの子と一緒にいたいし、君達と居るよりずっと楽しいと思うけど」
「さ、くや、さん……」
僕のために怒ってくれてる……。僕なんかの為に。朔夜さんの胸に寄り掛かるようにすれば、僕を安心させるために背中を撫でてくれる。
「あ、はは……。じょ、冗談だよ!行こ!」
「はは……。ごめんねぇ……」
お姉さんたちは出て行ってしまって、ホッとしていると店員さんがやってきた。
どうやらあのお姉さんたちは常連のようで、周りを気にせず大声で喋ったり、態度が良くなかったみたいで店員さんが何度も注意するが直らなかった人たちらしい。
「本当に、本当に助かりました!ありがとうございます!」
「いえ、そんな……」
店員さんにお礼を言われ、店内でも拍手が巻き起こった。居ずらくて早く食べて店を出たのだった。
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