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第26話

「出来た!春海くん肌綺麗だし、化粧乗りいい!また今度違うメイクさせて!」 「すごーい!クマが消えてるよ!見て見て律!」 蛍ちゃんが化粧ポーチからいろいろメイク道具を出している時からちょっと嫌な感じはしていた。 千花ちゃんに鏡を貸してもらって自分の顔を見る。確かにクマが無くなってる!すごい! でも、なにこれ? 「なんで唇テカテカしてんの?」 「グロス塗ったから」 「ぐ、ぐろす……?」 「唇がぷっくりして見えるリップみたいなやつだよ!」 へぇ、そんなのあるんだ。 だけどなんでそれを僕に塗った?別に唇をぷっくり見せたいなんて思ってないんだけど。 でもクマが完全に消えてるのはすごい。 こん、こーんしーら?こんしーらー?なんかそんな名前だった気がする。それを塗ったら綺麗にクマが消えたのだ。 僕も買おうかな.......。 「はい、みんなおはよー」 「あ!有馬先生!見て見て!律可愛いでしょ!」 今日はチャイムがなる前に教室にやってきた先生。 千花ちゃんが先生を呼んだため、こちらにやってくる。 おい千花ちゃん!!呼ぶんじゃないよ!こんな姿見られたくないのに!! 僕の気持ちなんてお構い無しに先生は僕たちがいる席までやって来て、にこにこと笑っている。 「へぇー、いいじゃん。前髪可愛い」 「か、かわ……」 「よかったね律!可愛いって!」 「あれ?唇も何かついてる?」 そう言って、じっと僕の顔を見つめる先生。何度も近くで顔を見たけれど、やはりかっこいい。 はわわわ、と顔を真っ赤にしていると先生にクスクスと笑われた。うわ、絶対わざとだ! 「唇にはグロスを塗ったんだ!あとクマが酷かったからコンシーラーで隠した!」 「へぇー、器用だな。上手だけど、うちの学校化粧禁止だって知ってる?」 「知ってるけど、有馬先生はあまり口煩く言わないでしょ?」 確かに先生はあまり口煩く言うタイプではないかもしれない。どちらかと言うと生徒の味方と言うか、この前も「別に化粧してようがしてまいがどうでもいい」みたいな事言ってたもんな。 だけど先生は少し困ったように笑う。 「実は生活指導の担当になっちゃって。嫌でも口煩く言わないといけないんだ。だから、春海くんはホームルーム終わったら職員室に来ること!分かった?」 「え!?僕!?蛍ちゃんでしょ!?」 「私の代わりに生贄になってくれてありがとう。お詫びにこれあげる」 そう言って手渡されたのは、パイン味の飴だった。 あ、この飴結構好きなんだよな。 ……じゃなくて!職員室に連行される対価が飴ってどうなの!?割に合わないよ!

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