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第30話

やっと校門前までやって来た時、千花ちゃんが「あ!」と声を上げた。 正直目を開けるのも限界で、ほぼ半分寝た状態で千花ちゃんに運んでもらっていた。千花ちゃん、思ってた以上に力持ちだ.......。 「有馬先生ー!律がぶっ倒れそうだよー!」 「え、有馬先生いるの.......?」 「いるよ、校門前に立ってる。あ、こっち来た」 先生にはバレたくなかったのに。まさか千花ちゃんに肩を貸して貰わないと足元も覚束無い状態だなんて思っても見なかっただろう。 たった2日寝てないだけでこんなにしんどいだなんて、僕も初めて知った。 視界がぐわんぐわん揺れているけど、先生が近くにいるのが分かる。顔は見えないけれど、今どんな顔をしているの? 「春海くん、大丈夫?」 「だいじょうぶ、です.......」 「わかった大丈夫じゃないな。 春海くんは俺が送って行くよ。須藤さんありがとうね」 「いやいや!律なんて軽いもんだよ!じゃあ、律のこと頼みます!」 じゃあねー!と元気よく行ってしまった千花ちゃん。ちゃんとお礼言えてないから明日にでも言わないと。 先生の腕の中に収まっていると、なんだか安心して一気に眠気が襲ったきた。 「んー.......」 次に目覚めるとそこは朔夜さんの寝室だった。朔夜さんの匂いがするベッドの中で目が覚めて、やっとまともな睡眠が取れたような気がする。 隣には朔夜さんは居なくて、外はもう明るい。 確か千花ちゃんに運んでもらって、それから朔夜さんが来て.......。 それから.......? 記憶かない.......という事は、僕はあの時朔夜さんの胸で爆睡してしまったのだろう。記憶が無くなるぐらいに。 すごい迷惑掛けてしまった。ちゃんと謝らないと。 朔夜さんはどこに行ったのだろう。 ベッドサイドの時計に目を向けると、時刻は10時を過ぎた頃だった。 10時.......? て、夜じゃなくて朝だよね?外明るいもんね。 てことは、僕夕方から朝の10時まで寝てたの!? え、学校完全に遅刻なんだけど。 ちょっと遅すぎるが学校に遅刻の連絡をしようとスマホを見ると、朔夜さんからメッセージが届いていた。 『今日は休みなさい』 簡潔なメッセージだ。 休んでいいのだろうか。なんだか悪い事をしているみたいでドキドキする。 でも先生がそう言うならもう休んじゃおう。 再びベッドに寝転び、布団の中に顔を埋める。 朔夜さんの匂い.......。落ち着く.......。

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