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第41話
失敗したと思っていたカレーは案外普通の味だった。底が焦げていたから、全体的に苦くて不味いと思っていたのに。
朔夜さん曰く、底だけ焦げているから上は普通の味らしい。
良かった。朔夜さんも食べてくれたし、次からは焦がさずにちゃんと作れると思う。
「あ、その手.......」
「え、あ、えっと.......慣れてなくて、切っちゃった。でも深い傷じゃないし大丈夫だよ」
「俺の為にありがとう。洗い物は俺がするからゆっくりしてて」
僕の傷だらけの手を優しく握り、洗い物をしに行ってしまった。
はー、朔夜さんほんと優しいんだよなぁ!あんなイケメン絶対女の子が放っておくわけないじゃん!というか、もう好きな人に告白したのかな.......。その人と付き合う事になったら僕はどうなるんだろう.......。
急に不安になる。ずっと一緒にいたいけど、それは叶わないから。今だけは僕だけの朔夜さんで居て欲しい.......。
「朔夜さん.......」
洗い物をしている朔夜さんの所まで行って、袖をキュッと引っ張る。
「ん? どうしたの.......っ!?」
振り向いた朔夜さんの唇を奪った。触れるだけの短いキスだったけれど、すごく、ものすごーく緊張した。
「え、あの、律、それどういう.......」
「.......お風呂入ってくる」
「ちょ、律!?」
朔夜さん、とても驚いている。いつも自分からする癖に、僕からしたら驚くんだ.......。
恥ずかしすぎて、お風呂に入ると逃げてしまった。
あぁ、やってしまった。自分からキスするのってあんなに恥ずかしいんだ.......。うわぁ.......、恥ずかしい.......!
湯船に浸かりながらさっきの事を思い出してなんとも言えない気持ちになる。
出たらどんな顔して会えばいいんだろう。
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