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第55話
英国アンティーク雑貨を中心に、北欧のヴィンテージ雑貨なんかも置いてある。
とにかく綺麗で、ここに住みたいとすら思った。
いや、朔夜さんが待ってるから帰るけど。
「これにする!」
千花ちゃんが手にしていたのは、クマのぬいぐるみが花束を持っているものだった。確かに可愛いし、花束は造花だがこれなら枯れることなくずっと置いておくことができる。
これは喜んで貰えるんじゃないだろうか!
「きっと喜んで貰えるよ!」
「あと香水もプレゼントしたいんだ! 律、腕出して」
言われた通り腕を出すと、香水のテスターを腕に付けられた。4種類あるらしく、どれもいい香りで迷う。
千花ちゃんの腕に付いているのがフローラル系のローズと、シトラス系のハーブとレモンが混ざった感じのさっぱりした香り。
僕の腕に付いているのがグルマン系のバニラの香りと、オリエンタル系の少しスパイシーで刺激的な香りだ。
大人の女性が付けるなら、やはり定番のフローラル系かな。落ち着くならシトラス系だし、グルマン系は甘い香りが多いからどちらかと言うと若い女の子が付けてそう。オリエンタル系は香りの好みが分かれそうなイメージ。
「んんー、迷うけどローズかなぁ.......。この前バラの香りが好きって言ってた記憶が.......」
「どれもいい香りだから迷うね」
ものすごく迷っていたけど、ローズの香りにしたみたいだ。お会計から帰ってきた千花ちゃんは満面の笑みで「絶対喜んで貰える!」と自信満々だった。
千花ちゃんが嬉しそうだったから、僕まで嬉しくなってきてしまう。
それからはタピオカを飲んで解散する事にした。
千花ちゃんを駅まで送って、残りのタピオカをちびちび飲みながら僕も帰ろうと歩いていると、後ろから手を繋がれた。
「ぎゃあぁ!!」
「わっ、ごめん。驚いた?」
心臓が口から出るんじゃないかと思うほど驚いて、後ろを振り返るとなんと.......朔夜さんがいた。
え、なんでいるの?!しかも手!!!!繋いでる!!
「夕飯の買い物行こうと思って出てきたら律がいたから」
「もう.......!不審者かと思った!」
「ごめんね。俺以外に触られちゃダメだよ?」
「もし不審者だったら全速力で逃げるよ、そりゃあ.......」
もし朔夜さん以外の不審者なら手に持っているタピオカを投げつけて全速力で逃げているだろう。足は遅いが人間はピンチの時普段の倍の力を発揮するらしい。だから僕も逃げ切れるはずだ.......たぶん。
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