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第59話

お昼休み、不安がなくなり気分がいい僕はいつもなら断っている蛍ちゃんのメイクの実験体を承諾した。 「ねぇ、有馬先生と白石先生ちょー仲良しそうに話してたんだけど」 「「「「え!?!?」」」」 購買から帰ってくる最中に仲良さそうに腕を組み話しているところを目撃したらしい、同じクラスの女子生徒のその言葉に教室にいたほぼ全員が驚愕した。 僕も開いた口が塞がらない。蛍ちゃんに「動くな、そんなマヌケな顔するな」と言われたがこれは仕方がない。 「でも普通付き合ってても生徒に公言しないよね.......?」 誰かがぽつりと呟いた言葉に「確かに.......」と納得する。 先生同士の問題なのだから、生徒に一々言うはずがない。 心臓が押しつぶされそうだ。失恋ってこんなに痛いんだ。 「あ、コラ。またメイクしてるな?」 「大丈夫、先生にバレないスクールメイクだから」 「俺先生なんだけどね」 そこへ今一番会いたくない人ナンバーワンが登場した。 教室は一気に静まり返り、先生は「え、なに?怖いんだけど」とびっくりしていた。 本当は白石先生と付き合ってるんでしょ?と聞きたいが、あまり詮索するのは良くないという判断か何事も無かったかのようにまたお喋りを始めるクラスのみんな。 「え、怖い怖い。俺嫌われてるの?」 「さぁ? でもファンは減ったかも」 無表情で蛍ちゃんがそう告げる。心底興味がないようだ。 確かにファンは減っただろう。もう誰かの男だと知って好きになる人はあまりいない。 それにしてもショックすぎる。心にぽっかり穴が空いたみたい。 「で、いつまで続ける気なの?」 「あとちょっと待って.......!」 先生の前なのにメイクを止めない蛍ちゃんが怒られ、僕はまた生徒指導室に呼ばれた。僕じゃなくて蛍ちゃんを呼べばいいのに.......。

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