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第63話

中を確認せずに閉めるかな、普通.......。図書館司書さんも戻ってきてないし、どうなっているんだ。 「見てくれるか分からないけど、有馬先生に連絡してみるね」 「私からも送ってみる!」 クラス全員担任の先生の連絡先は入れている為、千花ちゃんからも有馬先生へメッセージを送ることができる。 まだ仕事中だし見てくれるかは分からないけれど.......。 外は暗くなっていき、校内は静まりかえる。誰もいなくなってしまったかのようだ。 「ごめんね、千花ちゃんまで巻き込んで。帰るの遅くなっちゃうね.......」 「全然いいよ!でもこうなるなら、寧ろ私が居て良かったんじゃない?1人で図書室って怖いじゃん!」 「怖いよそんなのー!千花ちゃんがいて良かった.......!」 本当に千花ちゃんが居てくれて良かった。もし僕1人だと考えると怖くて仕方がない。 今だってちょっと怖いのに.......。イスに座っている千花ちゃんにピタリとくっ付く。 不意に「あ、」という千花ちゃんの声にすら心臓が飛び跳ねるぐらいびっくりした。 「既読になってる。先生読んでくれたんだ!」 「ほんとだ!『今からそっち行く』て!」 「「良かったー!」」 先生だけが頼りだったのだ。来てくれると分かり、2人で抱き合って喜んだ。 早く帰りたい!とにかくここから出たい! しばらくすると扉の鍵が開く音がして、ガラッと扉が開いた。 「あ、いた、良かった!」 「「先生ー!」」 有馬先生の顔を見た瞬間、今までの不安が溢れて2人で先生に抱きついた。先生は抱き締め返してくれて「遅くなってごめん」と謝っていた。 先生は謝らなくていいのに.......。 「でも、なんでこんなことに?図書室に閉じ込められたなんて」 「律が白石先生に頼まれて教材を図書室まで運んで、ついでに図書館司書さんが用事あるからちょっと残って欲しいって言われて待ってたんだけど帰ってこなくて、下校時間だし先生呼びに行こうと思ったら鍵掛かってたの」 「図書館司書さんどこ行っちゃったんだろうね?」 僕の質問に対し、先生が答えた。「帰った」と。これには僕も千花ちゃんもびっくりだ。おじいちゃんな図書館司書さんだとは思っていたが、僕たちのことを忘れて帰るか!? 「確か誰かに図書室の鍵を渡して、中にいる子たちにありがとうと伝えて、みたいな事言ってたんだけど.......。誰に渡してたっけな.......」 「そこ大事だよ先生!」 「思い出して!」 しばらく考えていたが、何せ作業しながら遠くで話す声を聞いただけなので誰に渡していたのかは分からないらしい。 まぁ助かったし良しとしよう。

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