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第66話
「それに、好きな人居るって言ったじゃん。興味ない人からの好意なんて嬉しくないよ」
「その好きな人が白石先生だと思ったもん.......」
やっと朔夜さん、好きな人に告白して成功したんだ、と思っていた。美男美女でお似合いだなって。胸がズキズキ痛むけれど、好きな人の幸せを祝福していた。
朔夜さんはムッとした顔で僕を見下ろす。なんで機嫌悪いんだよ.......。
「鈍感か。この際だから言うけど、俺の好きな人は.......」
ピンポーンとチャイムが鳴った。
もう少しで朔夜さんの好きな人を教えて貰えるチャンスだったのに!
「有馬さん、お荷物です。サインお願いします」
「あ、はい」
ナイスすぎるタイミングで荷物が届いた。
逆に良かったかも。朔夜さんの好きな人を知った所で、傷つくのは僕だ。
でも教えてくれるって事は、応援してねって意味なんだろうな。
どうだろう、応援できるかな。僕だって人間だし独占欲くらいはある。朔夜さんを取られていい気分にはならない。
制服をハンガーに引っかけ、そんな事を考えていた。
部屋着に着替えてリビングに行くと、机の上に先程の荷物が置かれていた。ノルウェーから届いたこの荷物。
「それ、律宛だよ。たぶんお母さんからじゃないかな」
「だね。開けてみようかな」
たぶんまた仕事先が変わって今度はノルウェーにいるだと思う。勤め先が変わるとその度に送られてくる荷物。荷物というかプレゼントなんだろうけれど。
開けてみると、やはり服がたくさん入っていた。たぶんノルウェーの民族衣装だと思う。毎回送ってくるけれど、1回も着たことがない。思い出としてクローゼットに収納されていく。この服もそうなる予定だ。
服の下に何か小さな袋みたいな物もある。バラバラに5個ほどある黒く小さな袋に入ったこれはなんだろう.......。お菓子?と思ったけれど違うと思うし、これはなんなのか。
「朔夜さん、これ何?」
「なんだろう。開けてみようか」
料理中の朔夜さんの元へ行き、開けてもらうと「うわ、」と朔夜さんが小さく叫んだ。なになに?そんなにヤバいやつなの?
ちょうど朔夜さんの指で隠れて中身が見えない。僕にも見せてよ!
「なになに?見たい!」
「だめ!大人の使う物だこれは!」
「えー!いいじゃん!僕もう大人だし見せてよー!」
「また今度ね!」
その今度は絶対来ないじゃん!何だったのかすごく気になるのに.......。
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