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第68話

「これで分かったでしょ。俺は律と一緒にいたいの」 「え、うん.......でもいいの? 白石先生怒ってたし.......」 「そんなの知らない」 ぎゅうっと抱き締められて、僕もそっと腕を回した。さっきもだけど、朔夜さんから抱き締めてくるのは珍しい。いつもは僕が「ぎゅってして」と言うからしてくれていたのだ。 疲れているのだろう。僕なんかを抱きしめて疲れが取れるのかなぁ。 それに、白石先生の件は本当に大丈夫なのだろうか。女の嫉妬ほど怖いものはないと千花ちゃんが言っていたのを思い出した。 さすがに好きな人を傷付けたりはしないだろうけど.......。 「ねぇ、朔夜さんは好きな人に告白しないの?」 「するよ。でもタイミングとか雰囲気とかあるじゃん。初めてずっと一緒にいたいって思えた人だから、できるだけ大切にしたいんだ」 「.......へー」 いいなぁ。朔夜さんにこんなにも思って貰える人。羨ましい。どんな人なんだろうか。 自分から聞いといて、朔夜さんの言葉がグサリと胸に突き刺さる。痛い。これ以上朔夜さんの好きな人の話し聞きたくない。 「律は好きな人いないの?須藤さんとかは?」 「居るけど.......たぶんダメ。あと、何回も言うけど千花ちゃんは恋愛対象じゃないの!」 目の前のあなたの事が好きなんですけどね。 千花ちゃんは恋愛対象ではない。友達としては好きだが、恋愛としてではない。周りから見れば付き合ってるように見えるかもしれないが、全くの誤解だ。 「律も好きな人に告白すればいいのに」 「無理だよ。叶わないもん」 「ふふ、どうだろうね。やってみないと分からないんじゃない?」 「んーん、やめとく。嫌われるよりよっぽどマシだもん」 意気地無しで構わない。少しでも長くあなたのそばに居られるのなら、自分の気持ちを殺してでも傍にいたい。 僕の答えに「そっか」と優しく背中を撫でてくれた。 ギシッと押し倒され、唇を奪われる。 あれ、今のそう言う雰囲気だった?てっきりもう寝るのかと思ってた。 「学校で我慢した分と、さっき玄関で我慢した分、2回キスね」 「え、朔夜さん.......?」 「ほら、口開けな。舌入んない」 「舌は入れなくてもいいよ!?」 「却下」 結局クタクタになるまでキスをされ、その後力尽きて寝落ちしてしまったのだった。

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