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第69話
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ざわざわと教室内が騒がしい。
「それでは、前回の単語テストを返却します。呼ばれたら取りに来て」
2限目は英語で、みんなが騒がしい理由は他でもない。
『今日の白石先生雰囲気違う』とヒソヒソと言われているのだ。
確かに言われてみればそうかもしれない。
いつもよりヨレているというか.......。色気もあまりない.......?
「一人名前を書いてない人がいます。取りに来なさい」
返ってきてないのは僕だ。しかし名前は絶対に書くようにしてるから、書いてないはずがない。
可笑しいと思いながらも取りに行くと、はぁ.......とあからさまに不機嫌そうにため息を付かれた。
え、何その態度.......。
「また春海くんなの?私の授業を舐めているのかしら。テストの名前すら書かないなんて呆れる。マイナス点にしときますからね」
「でも、名前はちゃんと書きました。昨日の事だから覚えてます」
「なら自分の目で確かめてみなさい」
ひらっと渡された単語テストを見てみると、名前が書いていない.......というか、書いていたのを消されている。肉眼でもうっすらとだが見えるので間違いない。
「でも.......」
「間違って自分で消したんじゃない? もうこれに関しては終わり。席に戻りなさい」
これ以上は時間の無駄よ、と取り合ってくれなかった。
せっかく満点続きだったのに.......。このテストだって名前があれば満点だった。
自分で消したなんて有り得ない。でも誰かが名前を消したなんて考えられない。もうどうなっているのか分からない。
「春海くん、放課後職員室に来てね」
「え、.......はい」
やっと授業が終わり、次の教科の準備をしていると白石先生にそう言われた。
職員室に呼ばれる理由は分からないけど、一応返事はしておいた。たぶん態度の注意をされるのかな.......。悪いことしてないし、普通だと思うんだけどな.......。
「なにあの態度!超ムカつく!!」
「絶対律のこと嫌いだね。テストの件も身に覚えがないんでしょ?白石先生がやったんじゃない?」
「え、いやいや、ないよ流石に.......」
蛍ちゃんのとんでも発言を否定はしたものの、少し僕も疑っていた。と言うか、名前を消せる人は白石先生しかいないんだもん。
だけど証拠もないし、何故そんなことをしたのかも分からない。
僕のことは嫌いでも構わないから、英語の成績は下げないで欲しい。先生の気分で生徒の成績が下がるなんて、たまったものじゃない。何のために高校に来ているのか分からないじゃないか。
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