70 / 143

第70話

放課後、言われた通り職員室に行ったが白石先生はまだ帰ってきていないという。 仕方ないから職員室の前で待ってると、わしゃわしゃと髪を撫でられた。 「どうしたの?」 「わ、先生! 白石先生に職員室来いって言われたから待ってるだけだよ」 「何かやらかした?」 「特に何も。でも最近不思議な事が多くて.......」 有馬先生と話していると、コツコツとビールの音が近付いてきて、近くでピタリと止まった。 先生に隠れてちょうど見えないが、誰かは見なくても分かる。 キツすぎる香水の匂いに鼻をつまみたくなる。 「あら、春海くんもう来てたの?待たせてごめんなさいね」 「.......いえ」 「それじゃあ行きましょうか」 これは誰だ。 同一人物なのか? いつも授業をしている時と、有馬先生の前とでは明らかに態度が違いすぎる。 好きな人の前では変わるものなのだろうか.......。女の人って怖い.......。 有馬先生にまたねと手を振って、白石先生の後を着いていく。 連れて来られたのは空き教室。なんでこんな人気のない所にわざわざ連れて来るのか。何だか怖い。 「単刀直入に言うわね。もう有馬先生と関わらないで。あなたが有馬先生に色目使ってるの気付いてないとでも思った?」 すごいデタラメなことを言うな.......。関わるな、なんて無理な話しだし、僕がいつ有馬先生に色目を使ったというのだ。色目を使ってるのは白石先生の方だろう。 「関わるなって.......、でも担任の先生だし関わらない方が難しいと思いますけど.......」 「必要最低限は許すけれど、さっきみたいにベタベタ先生に引っ付かないで貰える?本当に気色の悪い子.......、先生のお気に入りだからって調子に乗ってんじゃないわよ!」 は.......?なにそれ.......。なんで僕こんなに言われなきゃいけないの.......? もう怖いし泣きそうだし帰りたい。 「分かった?春海くん。言うこと聞けるわよね」 「.......はい」 「いい子は好きよ。さっきの単語テストの件、チャラにしとくわね」 じゃあね、と笑顔で去っていく白石先生。 僕は何が何だか分からなくて、膝から崩れ落ちて泣いた。 なんで白石先生にここまで指示されなきゃいけないんだ。他にも仲良さそうにしている生徒は居るのに、なんで僕なんだ。 ただ先生の事が好きなだけなのに.......。やっぱり気持ち悪いのかな.......。

ともだちにシェアしよう!