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第72話

必要最低限は関わるな、と言われたが帰る家は同じな訳で。だから関わりを無くすのは本当に難しい。 できるだけ喋らないようにしているが、さっきから朔夜さんからの目線が痛い。 「何か隠してるな?」 「な、なにも隠してないけど.......」 「嘘つけ。白石先生に何か言われたんだろ」 「別になにも言われてないけど.......」 そりゃあ怪しまれるよ.......。普段ベラベラ話すのに、今日は帰ってきてから朔夜さんと会話したのは「ただいま」と「おかえり」くらいだ。 いつもなら美味しいはずのご飯が今日は色々考え事をしながら食べたので、味はよく覚えていない。 さっきと態度が違いすぎる為、白石先生に何か言われたのかと問い詰められる。 でも言える訳ないじゃん! 「ほんとに何もないってば!」 布団に包まり、つい大きな声で言ってしまった。 しまった、ちょっと言いすぎた.......? シーンと静まり返る室内。何も言わない朔夜さん。どうしよう、傷付けてしまったかもしれない。 朔夜さんの事が気になりそっと布団を捲ると、隙間に目が合った。 想像以上に近くに顔があってびっくりしていると、待ってましたと言わんばかりに布団を引っペがされた。 「騙したな!」 「騙してないし。ほら、なんて言われたのか言いな」 「.............」 上から朔夜さんが覆いかぶさり、逃げられないようにベッドに手を縫い付けられている。 でも言えないからキュッと口を噤んで絶対に言わないぞとアピールする。 「そういうつもりなら、言わせるよ」 「.......?」 「これに耐えられるかな?」 僕の上でわきわきと指を動かす。 やばい、やられる!と思った時には遅かった。そもそも逃げられなかった。 朔夜さんは僕の脇やお腹をコショコショとくすぐり始めた。くすぐりには弱いのだ。 笑い転げるが朔夜さんの手からは逃れられない。 こんなの卑怯だ!! 「むり、むり!!いう!言うから!!」 「はい俺の勝ち。早く言いたまえ」 「卑怯だ.......。これ以上有馬先生と関わらないでって言われただけ」 言ってしまったよ.......。でもくすぐりには勝てない。こんなの誰も勝てない。 朔夜さんはドン引きと言った顔をしている。「頭が痛いよ.......」と頭も抱えだした。体調が悪いなら早く寝た方がいいのに。 「それでずっと俺と話さなかった訳ね」 「.......うん。でも関わらないって難しいね。だって担任の先生だし、同じ家に帰るんだよ?他の誰よりも朔夜さんといる時間が長いのに」 「そんなの律儀に守らなくていいの。学校は兎も角、家には白石先生は居ないんだからいつも通りでいいんだよ」 あぁ、確かに。学校では関わりのないフリをするが、家では普段通り話せばいいんだ。別に監視されてる訳でもない。 なんだ、良かったぁ。これからも朔夜さんとお話し出来るんだ。

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