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第78話
悪魔のような時間が終わり、お昼休みに突入した。
トイレに行きたくて廊下を歩いていると、空き教室から何やら声が聞こえてきた。
カーテンの隙間から除くと、中には有馬先生と白石先生がいた。
何やってるんだろう.......。秘密の密会的な?
様子を伺っていると、何やら口論の後、白石先生が有馬先生に抱きついて、キスを強請っている。有馬先生も顔を近づけようとしていて、完全にキスしようとしている。
これ以上見たくなくて、逃げようとしたら足がもつれて転んだ。しかも盛大に。
「あら、春海くんじゃない。大丈夫?すごい音したわよ?」
「あ.......、大丈夫です。お邪魔しました.......」
両足が痛くて泣きそうだ。転けた時に胸も打ってしまったのかもしれない。心もズキズキと痛む。逃げ込んだトイレの個室で足の痛みと胸の痛みで泣いた。
律が去った後、白石先生はクスクスと笑う。
俺はちっとも可笑しくない。本当は今すぐ律を追いかけて傷の手当をして誤解を解きたい。
「あの慌てよう.......ふふ。見られてしまったかもしれませんね」
「はぁ.......。もういいでしょう。時間ないので俺はこれで」
「あら、続きしてくれないんですか?」
クスッとこちらを挑発するような笑いに、イラッとした。
舌打ちしそうなのを堪え、深呼吸する。
「する訳ないでしょう。好きでもないのに」
冷たく言い放ち、ドアを閉めた。
クソ.......このまま鍵をかけてやろうか、という気持ちだ。
しつこい、しつこすぎる。今までも言い寄ってくる女性はいたし、多少しつこい人もいたが相手にされないと分かれば自然と去っていった。
今回も同じだと思っていたのに.......。
いくら冷たくしてもまるで効果がない。彼女の都合のいい捉え方は逆に見習いたいものだ。
挙句の果てには俺の大切な律にまで手を出しやがる。律を傷つけたら許さないからな。
さっきのは誤解だと律に説明したいのに、もう時間がない。仕方ない、家に帰ってからか.......。
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