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第80話
車が動き出し、キラキラ光る景色をただ見ていた。
沈黙が続くが話したい気分じゃないし、何の話題を振ればいいのかも分からない。
「ちょっと遠くて着くのは9時頃になると思う。眠かったら寝てもいいからね」
「.......うん」
今8時くらいだから、1時間は走らないといけないのか。
なんでここまでしてくれるんだろう。仕事で疲れているのに、1時間も車の運転なんてしたくないだろう。
僕と行きたいところって何処だろう。まぁ、なんでもいいや.......。
目を瞑ると自然と眠りの世界に吸い込まれていく。
起きたら全部全部、夢ならいいのに。
「律、起きて。着いたよ」
「.......ん、」
目を開けると車は止まっていて、辺りは真っ暗で僕たちしかいない世界に来たみたいだった。
時計は9時を少し過ぎている。着くまでずっと寝てしまっていたのか。
車を降りると、朔夜さんに手を引かれ丘の上を登る。登った先は展望台のような場所で、夜景と星空がすごく綺麗だった。
「ここ、俺の秘密の場所。誰も連れてきた事ないんだ」
「.......すごく、綺麗だね」
秘密の場所に僕を連れて来てくれてありがとう。僕は死ぬのか?それ以外思いつかない。
「律に言いたいことがあるんだ。ずっと言おうと思ってた。もう気付いてるかもしれないけど.......」
「.......うん」
結婚するんだよね。白石先生と。
「好きなんだ、律のこと」
だけど思っていた言葉とは全然ちがくて。
「.......え?」
「好き。大好き。ずっと一緒にいたい、だから俺の前から居なくならないで」
「.......え?」
理解できない、本当に分からない。
朔夜さんが僕の事が好き?白石先生と結婚するのに?
「で、でも、白石先生と結婚するんでしょ?」
「する訳ないだろ。有り得ない」
「でも、白石先生指輪付けてたし.......」
「話せば長くなるんだけど聞いて」
そして朔夜さんは、白石先生との事を話し始めた。
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