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第82話
朔夜さんの話しを聞いて、全部僕の勘違いであったと気付かされる。
一人で拗ねて、子どもみたいな嫉妬心で朔夜さんを困らせてしまった。本当に申し訳ない気持ちになる。
「そうだったんだ.......。僕知らなくて、不安で、朔夜さんのこと困らせちゃった.......」
「信じられないのは無理ないよ。俺の方こそ、本当にごめんね」
ぎゅうっと抱きしめられ、僕も背中に手を伸ばす。朔夜さんの体温が心地いい。
もう少し抱きついていたかったのに、すっと体を離された。
照れくさそうな顔で僕を見つめる。
「一応、告白したんだけど.......。返事貰えると嬉しい」
「あ、.......うん、まだ信じられなくて.......」
「だよね.......」
「両思いだってこと.......。夢じゃないのかなって。諦めてたのに、絶対叶わないって思ってたのに.......、本当に僕なんかでいいの.......?」
朔夜さんが僕の事を好きだなんて.......都合よすぎて夢かと思ってしまう。叶わない恋だと思っていた。僕みたいな子ども相手にしてないって。
真剣な顔で僕を見つめる朔夜さん。
「律がいいんだ。律じゃないとダメなんだ。こんな俺だけど、付き合ってくれますか?」
「.......は、い! ぼくも、.......好き、です」
強く抱きしめ合い、お互いを確かめるように触れるだけのキスをした。
嬉しい。夢見たい。ずっと好きだった朔夜さんと両思いになれたなんて、信じられない。
心がモヤモヤしていたのに、今はそれはなくて嬉しくて飛び上がりそうだった。
「少し冷えるね。戻ろうか」
「帰るの?」
「いや、ホテル泊まろうかなって」
近くにあるんだ、と手を繋ぎ丘を降りる。
ホテルは久しぶりだな。朔夜さんの家に行く前はよくビジネスホテルに泊まっていた。
少し走った所にホテルらしき建物が立っていて、そこに入る。僕が泊まっていたホテルとはまた雰囲気が違う。
ここのホテルはフロントに人が居なくて、タッチパネルで部屋を選ぶことができるらしい。技術が発展してるなぁって思った。
「ラブホで申し訳ないけど、寝るだけだし大丈夫かな」
「らぶほ.......?」
「らぶほ」とは何なのか分からないけど、部屋を開けるとそこはとても綺麗な部屋だった。
普通のホテルって部屋じゃなくて、例えるならお姫様の部屋みたいな。
ベッドがものすごく大きくてふかふかしてるし、なんか部屋が全体的にキラキラしている。こんなホテルあるんだ!すごい!
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