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第84話
翌日、やり残したことが山ほどあるので一旦家に帰った。
洗濯物は回してないし、洗い物もしていない。ご飯も炊いたままでずっと保温状態だった。
すぐ戻るし.......と思って全て後回しにしていまったのがダメだった。
「ごめんなさい、僕のせいで.......」
「家事よりも律が大事だから気にしてないよ。戻って来てくれてありがとう」
「優しすぎる.......好き.......」
「俺の方がもっと好きだよ」
2人で洗濯物を干しながら、時折キスをする。洗濯物で隠れて僕たちのことは誰にも見えてない。
こっそりキスして、2人で微笑む。本当に幸せな時間だ。
「これが終わったらどこかお出かけする?」
「あ、ノート買えなかったから買いに行きたい」
「あぁ、文具屋さん閉まってたんでしょ。あそこ気まぐれだから。夕飯の買い物ついでに買おうか」
昨日の洗濯物を畳みながらそんな話をする。
なんだか不思議だ。家族って、こんな感じなんだろうなぁ。経験してないから想像だけど。
軽い昼食を作ってくれて、それを食べる。やっぱり朔夜さんが作るご飯が一番美味しいと思った。
料理が苦手な僕だけど、少しは作れるようになった方がいいかもしれない。カレーは問題なく作れるようになった。朔夜さんは「カレーが作れたら怖いものはない」と言ってくれたけれど.......。カレーが作れても怖いものはたくさんあると思うんだよね。
「宿題やった?」
「んー、分からない所があるから進まない」
「教えようか?」
「数学だよ?」
「たぶん分かると思う、自信はないけど」
朔夜さんは数学が苦手らしい。理系は全くダメで、文系の道に進んだそう。僕もどちらかと言うとそうだ。理系とか、数字が出てくると分からなくなる。
ご飯を食べて、教科書を持ってリビングの机に開く。隣に朔夜さんが座って、分からないところを言うと「俺も分からないかも」なんて言いながら教科書を読んでいる。
「ここがx.......いや、yだな。あ、なるほどね、分かった分かった!」
「先生答え教えてー!」
「答えは教えません。まずここにxを代入して.......」
今は「朔夜さん」ではなく「有馬先生」だな。
答えまでの過程を丁寧に教えてくれて、数学の先生より教え方が上手だと思った。
高校卒業までの数学ならなんとか分かりそう、と言ってくれたのでどうしても分からない所は朔夜さんに聞こうと思う。
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