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第86話

* 月曜日、学校に行く途中後ろから体当たりされた。こういう事する人は一人しかいない。 「千花ちゃん?」 「残念、私」 「蛍ちゃんか!」 蛍ちゃんに体当たりされた事はなかった。確かにいつもより衝撃は軽いなと思った。蛍ちゃんは小さいからその分衝撃は軽いのだろう。 て言うか本当に小さい。頭が僕の肩の位置だし、ランドセル背負ったら小学生じゃん。 「今すごく失礼なこと考えてたでしょ」 「ごめんなさい」 「罰として今日は髪のアレンジね。あと新しいリップ買ったから試させて」 「.......はい、わかりましたです.......」 メイクする時の蛍ちゃんはイキイキしている。目がキラキラしていて、本当にメイクするのが好きなんだなって分かる。 教室に入ると、何やらザワザワしている。 何してるんだろう。 「あ、春海くん.......。今片付けるから、見ない方がいいよ.......」 「誰なんだろ、こんな酷いことする人.......」 僕の机の周りを取り囲む人たち。隙間からだがハッキリ見えてしまった。 僕の机の上に花を添えた花瓶が置かれていて、机や椅子には画鋲がばら撒かれている。 信じられなくて言葉を失った。 「律、一旦外でよう」 「あ.......うん.......」 放心していると、蛍ちゃんに手を引かれて外に連れて行かれた。中庭のベンチに腰を降ろし、ずっと僕の背中をさすってくれる。 なんで?僕は何か悪いことをしてしまった?誰かの虐めのターゲットになってしまったのだろうか。だとしたら何故? 「律ー!大丈夫!?一応片付けて、机の中身も確認した!.......戻りたくなかったら、保健室行く? 気分悪いなら早退しても大丈夫だと思うよ.......?」 「ありがと、千花ちゃん。 大丈夫、戻るよ」 千花ちゃんを中心に僕の机周りを片付けてくれたらしかった。あとでみんなにお礼言わないと。 正直戻りたくないけど、みんなと一緒なら大丈夫な気がして戻る事にした。

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