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第87話
授業中は安心なので、あまり授業を聞くのは好きではないが今日ばかりはずっと授業を受けていたいとすら思った。
少しでも気を抜くと、さっきの光景が浮かんで怖くなるから、授業に集中して考えないようにしていた。
「春海くん、須藤さんから聞いた。本当に大丈夫?無理しないで」
「先生.......、僕は大丈夫だよ」
「.......何かあったらいつでも言って。あと一人で行動しちゃダメ。最低三人で行動すること、分かった?」
「はーい」
現国の授業終わり、千花ちゃんが先生に言っていたらしく、有馬先生がめちゃくちゃ心配して僕の所へ来た。
逆に心配かけて申し訳ないくらいだ。
クラスのみんなも出来るだけ守ると言ってくれて、僕はそれだけで嬉しかったし泣きそうになった。
朝はあんな事があったが、それ以降は変な事は起こらず無事学校が終わった。
あとは帰るだけだし大丈夫だろう。
スマホが震えてメッセージを確認すると先生からで「寄り道せずに真っ直ぐ帰ること!」と送られてきていた。
すごく心配されてる。学校からマンションまで近いし大丈夫だよ。
「なぁ、春海ってすぐそこのマンションだったりする?」
「あ、うん。そうだよ」
クラスメイトの赤城くんからそんな事を言われ、頷いた。あまり話した事はないけど、しっかりしていてクラスのまとめ役っぽい立ち位置の彼。
ニカッと笑うと、やっぱり!と続けた。
「俺そこ通り道なんだよ!たまに春海がマンションから出てくるとこ見るからそうかなって。一緒に帰ろうぜ!送るから!」
「ありがとう、助かる!」
一緒に帰る予定だった千花ちゃんは急遽補習が入り、蛍ちゃんはバイトですぐに行かないといけないらしく、帰りは1人かぁと思っていた所だった。
ちょっと一人で帰るのは怖かったから、すごく助かる。
「なぁ、白石先生と有馬先生が結婚するってマジだと思う?」
「どうして?」
「いや、イマイチ信憑性がないって言うか。白石先生の一方通行な気がして仕方ないんだよなぁ」
赤城くん鋭いな。
でも、僕からは何も言えないから言葉を濁しておいた。
わかる人には分かるのかもしれない。僕は騙された人だったが。
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