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第88話

「あ、ちょっと君!」 もう少しでマンションに着くという時、シルバーの車から一人の男性が降りてきた。 誰だろう。赤城くんの知り合い? しかし、赤城くんも驚いた顔をしている。 知り合いじゃない.......?だとしたら何? 「君だよね。タダでヤらせてくれるっていう子。待ってたんだ」 「え!?僕!?違います!!」 何の話かさっぱり分からない。タダ?ヤらせる?訳が分からない。 手を引っ張って車に乗せられようとする所を赤城くんが助けてくれた。 背の高い赤城くんの後ろに隠れ、ビクビクと体が震える。 「俺の友達に手を出すな!何かの間違いだ!どっか行け!!」 「えぇ、おかしいなぁ。でもこの顔写真君でしょ?自分で登録しておいてそれはないよ」 男性がスマホの顔写真を僕に見せる。それは間違いなく僕だった。だけど、明らかに盗撮だろうという角度で撮られているし、こんな写真撮った覚えもない。 ゲイのマッチングアプリで、僕の名前と写真を使って性行為目的の出会いが募集されているらしい。 言葉を失った僕の変わりに、赤城くんが説明してくれる。 「そうなの?残念だなぁ。でも気をつけた方がいいよ。君を狙ってる人が沢山いるはずだ。連れて行かれないようにしなよ」 男性は分かってくれて、忠告もしてくれた。 一体誰がこんな事をしているんだろう.......。 怖くて震える僕の肩をガシッと掴み、赤城くんが真剣な顔つきで口を開く。 「これから毎日送り迎えする。明日の朝、マンション前で待ってるから」 「あ、ありがとう.......。赤城くん、優しいね」 「普通だろ。友達なんだから!」 照れくさそうにする赤城くん。 本当に赤城くんが居なかったら、今頃連れて行かれてたかもしれない。そう思うと怖くなる。 命の恩人だな.......。 マンション前で別れ、部屋に入ると安心してしまって一気に力が抜けた。 はぁ、疲れた。早く朔夜さんに会いたい.......。

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