90 / 143

第90話

翌朝、起きるとスマホにメッセージが入っていた。 赤城くんからで「8時にマンション前で待つ!」と決闘の申し込みみたいな文章が送られてきていた。 寝起きだけど、クスッとしてしまった。 「おはよう律。今日は早いね?」 「おはよう。今日から赤城くんと学校行く事になったんだ」 「へー、意外な組み合わせだね」 コーヒーを飲んでる朔夜さんの隣に座り、用意してくれているパンとスクランブルエッグを食べる。 「昨日ね、連れて行かれそうになったんだけど赤城くんが助けてくれたの。それで心配だから送り迎えするって」 僕がそう言うと、しばらくの沈黙の後、朔夜さんが血相を変えて僕の肩をガシッと掴む。 「え!?何て!?」 「赤城くんが送り迎えしてくれる」 「その前!」 「連れて行かれそうになった」 「それもっと早くいいなさい!!誰にどこに連れて行かれそうになったの!?」 言った方が良かったんだと思うけど、朔夜さんの顔みたら朔夜さんの事しか考えてなかった。 事細かに詳細を聞かれ、それに答えていく。 「ゲイのマッチングアプリ.......。その情報源がどこなのか辿れば誰が犯人かわかると思う。知り合いにそっち方面に強い奴いるから、そいつに頼んでみるね」 「う、うん。ごめんね、言うの遅くなって.......」 「本当に遅いよ!俺怒ってるからね! でも律が無事で良かった!」 怒っている様子だけど、ぎゅっと抱きしめられた。そうだよね、あの時赤城くんが居なかったら、今頃僕はここに居ないかもしれない。こうして朔夜さんの体温を感じることがもう一生なかったかもしれない。 そう思うと怖くなってきた。 「俺はもう行くけど、絶対誰かと行動するんだよ?分かった?」 「分かった!」 不安だ、と言いながら出て行く朔夜さんの後ろ姿を見送る。 僕はまだ時間があるのでテレビを付けて朝の番組を見る。ゲストに例のドラマの主演男優さんが出ていた。 なんでも今週が見どころらしい。忘れてなかったら見よう。

ともだちにシェアしよう!