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第92話
今日は僕の机は大丈夫そうだった。昨日のは何だったんだろう。
たまたま飾ろうとした花瓶を僕の机の上に忘れてしまったとか?画鋲もうっかり手を滑ってばら撒いてしまったとか。
.......流石にないか。僕はそこまで天然ではない。
「あ、忘れ物したから取ってくる!」
「着いていくよ?」
「うーん、近いから大丈夫!」
先程の移動教室で、ノートを机の中に入れたまま忘れていた事に気がついた。同じ棟のひとつ上のき教室で近かったので走って取ってくることにした。
万が一な事があっても、僕だって男だしそれなりには対処できると思うんだよね。
せっかく昼休みで朔夜さんお手製のお弁当を広げようとしていた所だったのに.......。
教室に入り、無事ノートを見つけて戻ろうとした時、後ろに引き倒されて尻餅をつく。
誰も居ないはずなのに、目の前にはニヤリと笑って鍵を閉める男性が立っていた。
恐らく上級生だ。制服を着た、少しぽっちゃりとした体型の先輩。
「君、ゲイのマッチングアプリに登録してるよね?」
「え、」
「これ君でしょ。俺とヤろうよ。可愛い顔してエッチなんだ」
また例のマッチングアプリか.......。まさかこの学校でもやってる人がいたなんて。
迫ってくる先輩に、事情を説明するが信じて貰えなかった。確かに『誰かに勝手に登録された』なんて言っても信じて貰えないだろう。
「そんな嘘はいいよ。時間ないから早くヤろう!」
「ちょ、無理無理無理!!」
窓際に追いやられ、逃げ場がなくなる。
荒々しい息遣い、脂ぎった肌、ベタベタした手.......すべてが無理だ。
どうすればいい.......、逃げる方法を考えないと.......。
「ちょっと!!律に手出すな!!」
「ふごっ!!」
千花ちゃんが教室の窓を飛び越え、先輩に向かって蹴りを入れた。先輩の足の隙間を狙って股間を思いっきり蹴ったと思う。
ち、千花ちゃん!?
目の前にいた先輩が床に蹲って悶絶している。僕まで股間が痛くなってきた気がする.......。
ドアの鍵は閉めたけど、窓の鍵は閉まってなかったのか.......。
「あ、ありがと千花ちゃん.......!」
「なかなか戻ってこないから見に来た。だから一人で行っちゃダメって言ったでしょ!」
「う、うん、ごめんね」
先輩は千花ちゃんにビクビクしながら僕に誤ってくれ、股間を抑えて去って行った。
「次やったらちんこもぐから」と中指を立てていた。
僕なんかより千花ちゃんのがよっぽど強かった。
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