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第95話

「あぁ、このアプリか。この程度のセキュリティ、ないも同然だよ」 「うわぁ、すごいね.......。全く分からないよ.......」 「真似しちゃダメだよ。これやっちゃダメなやつだから」 やっちゃダメなやつをやってる久我さんは大丈夫なのだろうか.......。 例の、僕の情報を使ってゲイのマッチングアプリに登録している件で、久我さんがそういうのに詳しくて、アプリをハッキング?して情報を漁ってくれるらしい。 英語や数字が並んだ文字をすごいスピードで打ち込んでいる。 「はい、もう入れた。 えーと、これかな?」 「あ!この写真!」 「思いっきり盗撮じゃん。しかも授業中か?」 久我さんがクリックしたURLからこの前見せられた僕の写真が出てきた。朔夜さんの言う通り、これは授業中の僕を盗撮したものだと思う。なんの授業かは分からないが、机に座ってたぶん黒板を見ている時だ。 ここから、僕の情報を使った人物が分かるらしい。恐らくスマホからの登録だから、このアプリからその人の個人情報が見えてしまうそう。 「メアド、電話番号、住所、名前、全部分かったよ。タダで教える訳にはいかないけど」 「何が望みだ」 教えるには条件があるらしい。 確かにタダで教えるには軽すぎる情報かもしれない。それなりの条件は必要になってくるだろう。 「漫画の資料が足りなくてさぁ。朔夜と律くんに協力してもらいたいなぁって」 「漫画!漫画も描くんですか!?」 「趣味程度だよ。たまにコミケで売ってるけど」 すごい!ハッキングも出来るし、趣味で漫画も描いているらしい。コミケが何かは分からないが、売ったりもしてるっていうから人気なのだろう。 漫画の資料くらいなら出来そう。朔夜さんも一緒だし! しかし朔夜さんはうーーん、と物凄く考えている。何か問題があるのだろうか.......。 「でもお前の描く漫画って確か.......」 「R-18のBL。色んな体位をお願いしたい」 「そこが問題なんだよなぁ」 「別に本当にヤる訳じゃないんだからいいんじゃね」 何やら2人で話し込んでる。朔夜さんはイマイチ踏み出せないらしい。 漫画の資料ってだけなんだから、そこまで気にしなくていいと思うけどなぁ。 「でも律に変な事教えたくないし」 「僕は大丈夫だよ?」 「ほら、大丈夫だってさ。大人になる為にはこういう知識も必要なんだよ」 そうだよなぁ.......と渋々承諾していた。 漫画の資料になるのと引き換えに、情報を教えて貰った。朔夜さんにだけだが。 僕には後から教えてくれるらしい。 明日で全て終わらせる。 証拠は揃った。律に嫌がらせした事を後悔するといい。 朔夜はギリッと歯を噛み締めた。

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