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第101話
一段落し、家に帰ってくる頃にはヘトヘトだった。
今日はとても疲れた。でも、これからは嫌がらせがなくなると思えば心が軽い。
みんなと朔夜さんのお陰だ。本当に感謝の気持ちしかない。
バイト中の蛍ちゃんからも励ましのメッセージが来ていた。白石先生の無様な姿をこの目で見たかった、と送られてきていた。相変わらずの性格だ。
とりあえずご飯は炊いて、少し冷たくなった洗濯物を取り込んだ。洗い物を済ませ、洗濯物を畳んでいると、玄関が開く音がした。
リビングの扉を開けて、朔夜さんがネクタイを緩めながら入ってくる。
「ただいま」
「おかえりなさい。今日はありがとう。疲れたでしょ」
「いや、もっと早く助けてあげたかった。辛かったよね.......」
ソファに座る僕の隣に座り、しんみりと言われる。そんなの全然気にしてないのに。
朔夜さんが助けてくれたのは事実で、それは変わらない。僕はそれが嬉しい。
「そんなのいいの。僕は朔夜さんが来てくれただけで十分嬉しかった」
「はぁ.......。ほんと、俺の律を傷つけた罪は重いね。二度と顔みたくないレベル」
それは僕も同感。できればもう会いたくない。
朔夜さんも軽いストーカー紛いな事をされてうんざりしていた。「あんな性格悪い人のこと好きになる人いないよ」と本音を漏らしていた。
手を繋いで、そっと指を絡める。
「.............怖かった.......」
聞こえないくらいの小さな声だったのに、朔夜さんはぎゅうっと強く抱きしめて、背中をポンポンしてくれた。
「もう大丈夫だからね。辛い思いばかりさせてごめん」
「.......甘えてもいい?」
「いいよ」
我慢してたけど、やっぱり無理。さっきの怖い記憶が蘇って、ポロポロと涙が溢れる。
朔夜さんの肩口に顔を埋め、静かに泣いた。あやすように優しい背中を叩かれ、安心してだんだん眠くなってくる。
朔夜さんは僕のだもん.......。誰になんと言われようと絶対に離さないもん.......。
「ずっとこのままがいい.......。ずっと一緒にいたいよ.......」
「俺もだよ」
よしよしと頭を撫でられ、それが気持ちよくて目を瞑ると、あっという間に眠りの世界へ落ちていった。
「おやすみ、律。愛してる」
すやすやと眠る愛しの恋人にそっとキスを落とした。
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