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第110話
「お楽しみのようで何よりだよ」
帰る頃には暗くなっていて、19時を少し過ぎていた。
今日は早い帰りだったらしく、朔夜さんはもう帰宅していて、後から帰ってきた僕たちを笑顔で迎えてくれた。笑顔だが、目は笑っていない。怒っている.......。
「どこで何してたのかな?」
「タピオカ飲んで、ロールアイス食べて、伸びるホットドッグ食べてた」
「夕飯前にあまり食べさせるな!」
「俺は食うけど」
「お前じゃなくて律のことだよ!」
朔夜さんは僕の栄養面が心配なのだろう。だいぶ改善されたが、やはりまだ貧血や目眩は度々起こる。悪いことしてしまったな、と後悔した。
あれだけ食べたのに久我さんは朔夜さんお手製の夕飯をバクバク食べている。結構食べれる人だったんだな.......。
「おかわり」
「アホか。もうない」
「そーなの?じゃあ帰りファミレスでも寄っていこーっと」
夕飯をぺろりと平らげ、さらにはおかわりまでする気で、帰りにファミレスに寄ってから帰るらしい。胃袋がブラックホールなんだろうか.......。
僕は大好きな朔夜さんのお味噌だけをちびちびと飲んでいる。
最後に食べたチーズハットグが結構重かった。大きさもだが、中に入っているチーズもまた重い。お腹にずっしりとくる食べ物だった。
「ねぇねぇ、律くん。次はチーズダッカルビ食べに行こうよ!」
「わぁ、行きたいです!そこなら友達が美味しいってオススメしてたお店知ってますよ!」
チーズダッカルビも今流行っていて、SNSを見るとだいたいタピオカかチーズハットグかチーズダッカルビを見かける。
僕もチーズダッカルビは食べたいと思っていたのだ。だけど食べきれる自信がなくて行けずじまい。久我さんと一緒なら絶対大丈夫だ!
「律、浮気は許さないけど?」
「え!?浮気とかじゃないよ!?」
「うわ、お前って浮気とか気にしないタイプじゃなかった?重すぎじゃん」
「なんとでも言え」
そっか.......。朔夜さんのお友達だからといって、男の人と2人で出掛けるのは浮気になるんだ。
確かにそうかも。朔夜さんが僕の知らない人と二人きりで出掛けたら嫌な気持ちになるし、浮気を疑ってしまう。
僕はなんて事を.......!
「てか朔夜も来ればいいじゃん。そんなに心配なら、監視しとけば?」
「そうしようかな。一応律のスマホにGPSのアプリ入れてるんだけどね」
「は、キモ!引くわー!重いわー!」
え、僕のスマホにGPSのアプリなんて入ってないと思うけど!?
慌ててスマホの中身をチェックする。
いつもと変わらないけど.......。ん.......?
スマホの機能で、アプリを纏めておけるフォルダみたいなのが作れるのだが、一つ身に覚えのないフォルダが出来ていた。それをタップして横にスライドさせると、GPSのアプリが出てきた。
あ、ありました.......。いつの間に入れたんだろう.......。
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