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第121話

それから千花ちゃんを駅まで送り、今は朔夜さんとマンションまで歩いて戻っている。 駅まで近いから、散歩がてら歩いて行くことになった。 もう6月になろうとしているので、夜はそれほど寒くない。 「課題は進んだ?提出明日までだよ」 「それがね、聞いてよ!」 今日あった事を話すと、朔夜さんは可笑しそうに笑っていた。「コントみたい」と言われて、同じ事を思ったなぁと笑う。 まぁこのお陰で明日、蛍ちゃんか赤城くんにお願いして見せて貰うんだけど.......。赤城くんはともかく、蛍ちゃんに頼めば要求される事は一つ。僕は明日、蛍ちゃんのメイクの実験台になっている事だろう.......。 話しながら歩いていると、ふと手と手が当たりドキッとする。 .......手を繋ぎたい。 だけど、ここは外だしもうすぐ家に着くし.......なんて考えていると、ぎゅっと手を握られ顔を上げる。そこには優しい顔をした朔夜さんが微笑んでいた。 「手繋ぎたくて」 「僕も.......。同じ事考えてた」 えへへ、と笑って見せると頭を撫でられた。 幸い人通りの少ない道なので、僕たちの事を見てる人はいない。 なんだかイケナイコトをしているような気分だ。 「ねぇ、本当にバレちゃってよかったの.......?」 「いいよ、須藤さんだし」 「千花ちゃんだから良かったけど.......。もし生徒と付き合ってるって知られたら、朔夜さん先生辞めないといけなくなるんじゃないかって心配で.......」 正直に言うと、急に歩いていた足を止めた朔夜さんにぶつかりそうになる。 握っていた手を持ち上げられ、手の甲に軽くキスをされた。 「律と一緒にいれるなら、教師辞めるくらいの覚悟はあるよ」 その瞳は真剣で、僕を真っ直ぐ見ていた。 射抜くようなその視線に、胸がドキンと脈打つ。 「で、でも.......」 「逆に辞めれば咎められないのか」 「辞めないでね!?」 辞めようかな、なんて言う朔夜さんを止める。逆にそんな簡単に辞めていいのか。 僕のために教師を辞めるなんてだめだ!普段の朔夜さんも好きだが、先生してる朔夜さんも好きなのだ。 「そう簡単にバレないって。俺そんなヘマしないし」 「そ、そうだね.......?」 うん、朔夜さんはその辺しっかりしてるからバレなさそう。バレそうになっても上手い言い訳してそう。 そんな話をしていると、あっという間にマンションに着いた。 同じ家に帰る事が、これほど幸せとは知らなかった。ずっと続けばいいのに。

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