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第139話
「食べすぎると鼻血出るんだよ」
「そうなの?」
久我さんが自分の鼻を押さえてそう教えてくれた。
そうなんだ、初めて聞いた。じゃあ僕も鼻血出るのかな。いつ頃出るんだろう.......。ティッシュ持っといた方がいいの?
一応ティッシュを持って、いつ鼻血が出ても良いようにしていると、朔夜さんに笑われてしまった。
「チョコレートには血行をよくする物質が含まれてるから、体質によっては鼻血が出る人もいるってだけだよ」
「そうなんだ!」
「因みに俺は出る人」
そうだったんだ。朔夜さんは物知りだ。
チョコレートを食べると鼻血が出るという久我さんは、確かに一個しか食べてなかった。食べすぎると鼻血が出るからたくさん食べられないらしい。
お腹いっぱいチョコレートを食べるのが久我さんの夢だと言っていた。後に朔夜さんに「しょうもない夢だな」と言われていたが。
「じゃあ、俺は原稿しないとだから帰るわ。夏コミできたら届けにくるね」
「来なくていい。じゃあな」
たぶん朔夜さんの隙を見て夏コミを届けに来ることだろう。僕は久我さんの漫画が密かに楽しみだから、こっそり受け取ってこっそり読もうと思う。
久我さんが帰って、ソファでまったりしていると、なんだか頭がフワフワする。ちょっと熱っぽいけど、体は元気だ。
「朔夜さーん.......」
「どうしたの?」
「何となくくっつきたかっただけー」
隣に座る朔夜さんにドーンと体当たりするが、ニコニコと僕を受け入れくれる。
朔夜さんの腕にしがみつき、ピッタリと隙間なく密着する。テレビを見てる朔夜さんもかっこいい。なんでこんなにかっこいいんだろうか。
いいなー、僕も朔夜さんみたいなイケメンになりたいなー。
「んぇ、なに、律?ちょっと、え?」
「んふふ、朔夜さん.......」
「急にどうしたの?」
テレビに夢中な朔夜さんの顔を両手で包み、ムニムニと遊ぶ。急な行動にびっくりしていた。びっくりしてる顔も好きだ。
普段はしない行動に戸惑うが、律の熱っぽい瞳にふわふわした喋り方。
朔夜はもしかして.......と律を覗き込んだ。
「もしかして、酔ってる?」
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