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結婚相手と、番の関係と、6

 晴也は、高校生一年生の頃に、初めて発情期がきた。もう7年くらい前のことだ。別に発情期自体は成長の過程だから、なんでもない。ただ、場所が問題だった。通っていた高校の中で、発情期が訪れた。  当時通っていた高校は、雨情の出身の学校で、偏差値の高いところだったので、アルファが多かった。今でも、異常に暑い日だったのを覚えている。  熱中症のような症状が現れたと、相手のアルファは言っていた。部活中にやたら暑がるので、介抱のつもりで世話を焼いていた相手が発情期で、気がついたら、誘われるように組み敷いていたと。  アルファを知ったオメガは、発情期の匂いが一層濃くなる。その匂いに誘われたアルファが一人、また一人と増え、終わる頃には加害者側のアルファが、お互いの顔を覚え切れないほどだった。  早い話が、晴也は、初めての発情期で、襲われた。それも複数人に。  僕にとっては、アルファがオメガを襲うのは当たり前だ。でも、それは僕の若かった頃の話で、いまは相手がなんであろうが、非難されるべきことだ。少なくとも、晴也の頃にはオメガが普通に高校へ行くことも、就職をすることも一般的になってきていた。  晴也自身も将来や、いつか結婚する人に夢を見ていて、そのために頑張ろうとしていた時だった。  当人同士以外目撃者がいなかったこと、晴也が抑制剤を持っていなかったことで「合意の上である」と判断されて、被害届を出すことすらできなかった。そもそも、アルファとオメガの裁判では、アルファが勝つと相場が決まっているけれど、それでもせめて訴えようとしていた。それも、加害者の一人の親が止めに入り、むしろ耐え切れなかった晴也が高校を辞める結末になった。  最悪の結末だった。  オメガだからそれなりでいい、という中学の担任を無視して、兄への憧れで突っ走って、必死に背伸びをして入った高校なのに、一瞬で全てがおじゃんになった。  相手のアルファは、夢の中で百度刺しても、今現実でのうのうと生きているのだ。僕の大事な息子は、今でも悪夢に見るほど苦しみ続けているのに。  でも一番許せないのは、僕自身だった。  あの頃、冷静に考えれば晴也には確かに発情期の兆候があったのに、普段使いの抑制剤だけ飲ませて、緊急回避の薬の使い方も教えられていなかった。大丈夫だろうと、この人見知りの子が、他人の前で発情期になるわけないと、そんなくだらない油断をしたせいで、今もこの子を苦しませてしまっているのだ。

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