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大切の仕方 5
「子どもが今できたら、多分、子どもは両親に取り上げられるか、僕らの関係に、期限がつくでしょう」
正直、と努くんは前置きした。
「望むならいつか、という気持ちもあります。ただ今は……。それに、晴也に自分自身を大切にしてほしい。僕も晴也を大事にしたい。だから、しばらくは子どもを作ろうとは思っていません…」
「それでいいよ」
すかさずそういうと、努くんが顔を上げて、はっとした表情を見せた。
「二人で決めなさい。水守のおうちは、いろいろ言ってくるだろうけれど、二人の子どものことなんだから、二人で」
子どもが出来たからと言って、両親と一緒に住んで一緒に育てる、みたいな時代ではなくなりつつある。もし、晴也に子どもが出来ても、晴也は雪子と同じように夫々二人で育てることを望むだろうし、時たま辛くなったら、この間みたいに相談に来ると思う。
「けれど、君はちゃんと相談をすること。公的な機関でも、会社でも、うちのお父さんでもいい。君は晴也を、愛人だなんて思っていないだろう?」
努くんは大きくうなずいた。
すでにキッチンから音が消えていることは気づいていたけれど、知らないふりをして小さく笑う。
「思っていません。大切な家族で、…大切な、パートナーだと思っています」
「それなら、僕らは見守るよ。僕も君を信じる。気まずかっただろうに、ちゃんとこの間のことを謝ってくれたし」
僕は努くんと目を合わせた。
一度はアルファによって不幸になった、底に落ちた、と思った末の子だった。オメガなんて、産むんじゃなかったと百度は後悔した。僕は、幸せにするつもりでこの子を産んだのに、なんて試練を与えるんだと、簡単に産めといった彰を含め、あらゆるものを憎んだ。
人形のように反応のなかった晴也が、結婚したいと言った時、僕はどう考えたんだろうか。失敗して、また元に戻ると疑わなかった。
それでも、晴也は今、笑って立っている。たまに拗ねたり、実家にいた頃のように内弁慶になって甘えたり、たまに至極大人っぽい顔をして、また末っ子の顔をする。その変化は、誰でもない、アルファの努くんによってもたらされたものだ。
だから僕は、彰がそう思うよりも感謝しているし、努くんを大事だと思っている。5年前に止まりかけた針を、ゆっくり、一緒に進めてくれたのは、彼だからだ。
そんな彼が困っているのなら、僕はどこまでも味方でいたい。彰や、子どもたちにするように。
少しだけ、努くんは口籠って、
「……その、お義母さん。たまにはあなたに相談してもいいでしょうか」
「別にいいよ。彰も一緒にね。たまに拗ねてめんどくさいから」
君もそうならないようにね、というつもりで言うと、努くんはようやく笑った。
そうして晴也を呼んでくると席を立ち、しばらくたった後、目が真っ赤に充血した晴也と、少しだけ焦げた、おいしそうな野菜カレーを持ってきてくれた。
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