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第6話

「ゃ……どこ、を……」  ひたりと、指先が排泄口に触れた。  都市の教会の中にも、男色趣味の者はいた。げらげらと笑いながら、情事の話を面白おかしく喋って回る者も。  ……本当に、そんなところを?  射精ですら尋常ではないショックを受けていた教祖にとって、それは最早想像を絶していた。  恐怖の余り、歯の根が合わない。  痛みに対する恐怖、人外に対する恐怖、犯される恐怖、穢される恐怖、今までの人生を一遍に覆される恐怖。  全てが、恐怖だ。 「大人しく従え。そうすればいい思いをさせてやる」  耳元ではまた、魔法のような言葉が紡がれる。  抗わない事が正解なのか。黙って受け入れれば正しいのか。  ……たとえ肉体を犯されても。心さえ護れれば。  今となっては、それだけが教祖の拠り所だった。 「ぅ……くっ……」  狭い後孔を抉じ開けて、指が入り込んでくる。気色が悪かった。  それはぐねぐねと動き、内臓の感触を確かめているように蠢く。 「さあ想像しろ。今からここに、お前の忌避するものが突っ込まれるのを」  唇を噛み締めても、耳元で木霊する蠱惑の言葉は防げない。 「お前は今から尻穴を犯され、神に背く人ならざる者を受け入れ、射精され、そして穢される」  小さく首を振る。それが精一杯の抵抗だった。  どんなに犯されても、穢されても、心までは決して屈しない。 「いつまでそんな態度でいられるだろうな?」  ぐちゅ。  耳の中で、唾液の潰れる音がする。 「ほら、とても……気持ちがいい」 「ッ……!!」  一瞬の出来事だった。  がつん、と強い衝撃が走り、貫かれていた。  悪魔が何か仕込んだのか、不思議と痛みはなく、ただ強烈な異物感に襲われる。  尻に体毛と人肌の感触が伝わり、いとも容易く、根元まで飲み込んでしまった事を知った。 「ははは……いいねえ。ずうっと純潔を守って来たんだ。美味いわけだ」  体ごと揺さ振るようにして、悪魔は抽挿を開始した。  もっと、圧倒的な苦痛を伴っていれば良かった。それがないせいで、男がどんな風に動き、どんな風に己の体を扱っているか、まざまざと感じてしまう。 「ぁ、あぁ……ッ、もう、やめっ……」 「やめる? 何を今更。ああ、後ろだけじゃ足りないのか」 「ッあぁっ……!」  慣れない異物感は、ペニスを握られた事で疼きへと分類される。  先ほどの射精で濡れた竿を扱き、擽るように鈴口も刺激する。  それだけで一気に、腰が重くなった。健気なほどに、悪魔の手に喜んだペニスは反り返る。  神を裏切る前に、自分の肉体が精神を裏切っていくようだった。 「気持ちいいだろう? こんなに硬くして」 「っ……!」  教祖は首を振る。  意地でも、認めるわけにはいかなかった。  悪魔は無理に頷かせる事はしなかった。  ただ腰を使い、指を使い、快楽だけを教祖に与えた。 「たっぷり出してやる。お前もイくといい。これでお前は……俺の下僕だ」 「ぁ、ああっ! ひ、ぁ、あああッ……!」  思い切り直腸を抉られ、力強くペニスを扱かれ、教祖は板張りの壁に白濁をぶちまけた。  ほぼ同時に、悪魔も体内で射精に至った。  下腹部全体が、熱を持つ。  それは錯覚などではなかった。  臍の下に、聖典で見た、悪魔の烙印が赤く肌に浮かび上がる。  これでこの身は、この悪魔に、鎖で繋がれてしまった。  …………でも、村が助かるのならば、それで……  余りの熱さに、教祖は気を失った。

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