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諸刃の剣2
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今日が、吉川と藤城さんの決戦の日だった。
ノリトから聞いた情報を、約束どおりに吉川に横流しした。そのときの吉川の顔を表現するなら、戦に出陣する武将みたいにメラメラとたぎっている状態のように見えたんだ。
あとは話し合いによって、ふたりの関係がどうなるのか……。本当は俺が付き添って、吉川の猪突猛進スイッチの調整をすればいいんだけど(ほら、それこそ乱闘事件に発展したら、困っちゃうでしょー)
生憎と本日は、隣の高校との練習試合が控えていた。かといって大隅ちゃんに頼んでしまうと、自分の試合を見てもらえなくなる。とにかく吉川には自力で、何とか頑張ってもらおーと考えた。
「頼むから手にはサッカーボールや武器になりそうな物を持って、逢いに行ったりしたらダメだからねー。まずはノリトとのことを第一に、穏やかに話し合わなきゃいけないよー」
なぁんていう言葉を延々と喋り倒して、俺なりに言い聞かせた。
だがしかし、俺自身の不安を拭い去ることができなかった。だって吉川の顔色が、ぜんぜん変わってくれなかったからー。
あとは神頼みしかないなーと思いながら、晴れ渡る青空に向かって十字を切ってみる。あ、クリスチャンじゃないよー。だけど、何となく利きそうだったから切ってみた。
「どうか穏やかに、話し合いが終わりますように!」
一言呟いてマウンドに上がる。
さて、ここからが俺の勝負! 大隅ちゃんが応援してるんだから、この間よりも格好いいところを、ここぞとばかりにじゃんじゃん魅せつけないとねー。
奥歯をきゅっと噛みしめながら顎を肩に置くイメージで、投球するポーズをとった。キャプテンであるキャッチャーから、ストレートのサインが出される。
了解を表すように軽く頷きつつ、重心を下半身に乗せながら、得意の剛速球を投げつけてやった。
キャッチャーミットに吸い込まれるボールの音に遅れて、空振りのスイング音が辺りに響き渡る。
「よし、いい感じに球が走ってるねー。この調子で、三振とっていこーっと♪」
俺も頑張るから吉川も頑張りなよーと一瞬考えてから、試合にしっかり集中したのだった。
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