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君の世界の片隅で 第七話

「ソータ、1度だけ!1度だけで良いからやらせてくれ!!」 カウンターから皿が飛んできて、俺の手を握っていた奴の頭に当たって砕けた。 周りの客がゲラゲラ声を上げて笑う。 「ソータにちょっかい出すなと言っているだろう!ソータ!そこはもう良い!お前は中に入れ!!」 親指で厨房を指差されて、厨房に向かう。 「えぇ〜っ!!ソータの給仕を楽しみにして来たのに〜マルコフ!!お前のせいだぞ!!」 マルコフ、俺の手を握っていた男が頭を殴られてテーブルに顎をつく。 「だってソータとやりてぇんだもん」 「みんな我慢してんだよ!」 「でもソータの飯が食えるなら……残念だが給仕は諦めるか」 この世界の人達は性に奔放だなと思う。 しょっちゅうこう言ったセクハラ紛いのからかいを受けるが、大分慣れてきた。 盛り上がる客をかわして、カウンターへ入る。 仕事の傍ら店長に料理を教わって大分、様になってきたと思う。 見た目はどんなに酷くてもチートで味は旨い。 でも見た目だって重要だよね。 厨房へ入った途端に大量に注文が入り、店長に手伝って貰いながら、アクセクこなして行く。 「かぁ〜やっぱソータの飯は旨ぇなぁ……出発前に食えてよかったぁ…」 「魔王討伐依頼に出発するのか?やっぱ、一生遊んで暮らせる金はでかいよなぁ……俺は……どうスッかなぁ」 「魔王ってぐらいだからなぁ……生きて帰れるかわかんねぇからなぁ」 カウンター、目の前に座っている冒険者達の会話を聞くとはなしに聞く。 魔王か……。 俺様中二病な友人だった男の顔が思い浮かんだ。 山田……何をしてんだろう。 もうかれこれ1ヶ月以上はたっている。 俺はいつ元の世界に戻れるのか。 安くて良い宿を尋ねた俺に、店長は俺んちに来いと、間借りをさせてくれている。 熊の店長なのに美人な奥さんと可愛い娘。 幸せそうな家族を見続けるのも辛くなってきた。 父さん…母さん……。 心配してるよな。 この世界から戻れたら元の時間に戻っていると良いなぁ。 まず、この世界から抜け出す事が出来るかどうかだけど……。 山田……俺……お前に何かしたなら謝るよ。 だから早くここから出してくれよ。 このままだと、ここが居心地良くなって、帰る意思を削がれてしまいそうだ。 「今日はソータが仕入れかい?良いの入ってるよ!見ていきな!」 魚屋のおばちゃんに元気良く声をかけられる。 「おすすめ何?」 「脂ののったマッカサバだよ。この時期は特に美味いよ」 「じゃあ、こいつを20尾頂戴。店まで運んで貰える?」 「あいよ。後で息子に運ばせとくよ」 支払いを済ませて、次は八百屋……。 人通りの多い路地を目的地に向かって歩く。 随分この街にも馴染んで来たな……。 知り合いも随分増えた。 もう元の世界には戻れないのでは?という気もしてきている。 山田はもう俺の事なんて忘れているのでは無いだろうか。 「あっ……ごめんなさい」 黒いフードを被った人と肩がぶつかった。 考え事に没頭しすぎた。 頭を入れ換えて八百屋へ急いだ。

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