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俺の世界の中心に 第ニ話
次の日から、高杉 奏汰の観察を開始する。
容姿、能力共に並み。
特筆すべき点はない……昨日の様に力が増える事もない。
昨日のは何だったんだろうか?
そうして張り付く事、半年が経って発見した。
俺が話しかけると力の増加量が上がる。
他の奴らは話しかけると下がっていくのに……。
このまま、こいつに話しかけ続ければ全回復が、500年くらいまで短縮できそうだ。
………ダメだ。
こいつは人間だ。500年も生きられない。
「なぁ〜兄貴、奏汰の寿命延ばしてくれよ〜500年くらいでいいからさぁ」
力が戻ったところで、この世界の人間の事に俺は関与できない。
『馬鹿か……世界のバランスを崩す気はない。そんなのは自分の世界でやれ』
今日は黒猫姿の兄貴は興味無さそうに自分の体を舐めている。
「じゃあさ、俺が自分の世界を創り終わったら奏汰くれよ。連れて行きたい。奏汰以外は何も欲しがんないからさぁ」
『………お前まさか、あの人間の事……ふん、いいだろう。お前があの人間が生きている内に自分の世界を創れたらな』
兄貴は何かを言いかけて止めた。が、奏汰を連れて行っていいと約束してくれた。
これから忙しくなるぞ……力の無駄遣いは止めて、いっぱい奏汰に話しかけて……早く力を貯めて、早く世界を創らないと奏汰の寿命が尽きてしまう。
…………はっ!!奏汰の気配!!
黒猫に頭を下げている姿など見せるわけにいかない。
「行け!我が僕よ!!」
『……格好つけやがって……』
俺が手を上げて別れを告げると兄はのっそりと立ち上がり、去っていった。
教室でもなるべく奏汰の側で過ごすことにした。
「奏汰、それは何だ?何をしている」
奏汰は『スマホ』をずっと睨んでいる。俺と居るより大事な事なのか?
「エタアド……」
奏汰は相変わらず素っ気ない。
俺の事を崇拝しているのはバレバレなのにな……可愛いヤツめ。
「えたあど……?」
奏汰のスマホを覗き込むと、アプリとかいうゲームとやらをやっている。
『エターナル アドベンチャー ライフ』
ゲームの世界で疑似生活を楽しむ……らしい。
冒険するもよし、村作りするもよし、ゲームのキャラと親交を深めて、結婚も出来るらしい。
俺はリアルで天地創造やっているけどな。
「そんなものが面白いのか?奏汰は何を目的にやってるんだ?」
「ん〜魔王と結婚………いや…冒険してる」
ん……?奏汰の顔が赤い。
結婚と言ったな………結婚とはあれだ。
好きな奴と一緒に住んで子作りするあれだ。
番いになる事だ。
この魔王とやらが奏汰の好きなキャラというわけか……。
奏汰のキャラクターと魔王の会話を見ていたが、すげぇ偉そう……痛いセリフばっかだし……こんなヤツが良いのか?
ずっと見てると、見るなと怒られた。
家に帰り、早速スマホを模写して造り出す。
力を使ってしまったが、良い世界を創り上げる為の勉強なのだ。
決して無駄遣いではない。
新しい世界が出来た時、奏汰が早くなじめる様に居心地のよい世界を用意してやらねばな……。
しかし……やはりこの魔王と言うヤツは好きになれない。
奏汰め……こんなヤツのどこが良いんだ?全く理解できない。
もっと知識を深めねば……街の雰囲気もそれっぽく作ってやろう。
ネットとやらで『エタアド』の画像を探す。
……うおっ!?
何だこれ……魔王と男が交尾してる絵がいっぱい出て来た。
……奏汰はこれを望んでいるのか?
………………………。
駄目だ!駄目だ!!イライラする。
入れられている方の男を奏汰に置き換えて、想像したら頭に血が上って、スマホを壊してしまいそうになった。
同時に股間も熱い……。
………奏汰の為なら仕方ないな。
俺が一肌脱ごうじゃないか。
人間の交尾や愛とやらについても勉強しておこう……。
………奏汰の為だからな。
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