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君の世界の片隅で 第二話
それはいつもの放課後、家に遊びに来たいなら来ても良いぞと言うので……テレビ見たいから行かないと断ったが、どうしても見せたいものがあると泣きつかれて家までついて行った。
山田 太郎と言う、ふりがなの必要も無いぐらい9割以上の人が読める超メジャーでレアな名前を持つ友人は家につくなり、押し入れから何かを取り出して来た。
畳1枚分ぐらいの平べったい箱……
どうだと誇らしげに床に置かれたそれを覗き込むと……ジオラマ……?
RPG風の世界が表現されていた。
平原、山岳、海、街……
見れば見るほど、細部まで細かく良くできている。
小さなフィギュアが生活をする様に配置されているのもリアル。
美形以外にもこんな特技があったのか。
この男が将来どんな職に就くのか心配していたが、ジオラマ職人としてやって行けそうだ。
「良くできてるだろ……俺の理想の世界だ。この中でこの人々は俺の意思とは関係なく、自由な意志を持って生きている……そして………」
山田は机の引き出しから大事そうに小さな宝石箱を取り出すと中から1cm程の小さな人形を取り出した。
「これ、奏汰ね」
う〜ん……似てなくは……ないか……?小さ過ぎてよくわからない。
「奏汰は?職業何が良い?能力は?チートもつけて上げる」
「え〜職業?なんだろ……冒険者?かなぁ……能力……って急に言われてもよくわかんねぇ」
こんな事なら適当に返事をするんじゃなかったと思う。
「OK。冒険者で能力は……俺の好みで良い?」
俺が頷くと、山田は何か呟きながら俺の人形にキスをした。
………人形とは言え、俺だと言われたもの……微妙な気分だ。
「比較的安全な、魔物のレベルが低いところからスタート……ここがいいかな?」
草原の原っぱに俺の人形が置かれた。
「奏汰……」
山田が徐に俺に振り返った。
猫の様な鋭い綺麗な目が楽しそうに細められる。
山田の後ろで例のジオラマが浮かび上がり発光した。
「ようこそ、俺の世界へ……楽しんでね…奏汰……」
真っ白い光に包まれて………
見渡す限りの草っぱら、風が頬をくすぐり通り抜けていく。
『ようこそ、俺の世界へ……楽しんでね…奏汰……』
ここは…………あいつのジオラマの世界?
気付けば草原の中に立ち尽していた。
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