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君の世界の片隅で 第三話
そして、それから………色々あった。
俺は空を睨む。
「山田!!てめぇ、ふざけんな!さっさとここから出せ!!」
叫んでみたけど何の反応もない。
俺がおかしなヤツみたいだ……。
山田め……そこから俺を見下ろしているんだろう……。
山田に本当に不思議な力があった事よりも、
山田の作った世界に送り込まれた事よりも、
山田の作った世界で魔物に追われている事よりも、
山田の作った世界で男に狙われている事よりも、
山田にこんな嫌がらせを受けなければいけない程、嫌われていたのかと言う事がショックだった。
この世界に来て何日が経っただろうか……。
スタートするなら街から初めてくれれば良かったのに。
初めは、山田が飽きれば元に戻されると思っていた。
なんだかんだと適応できているが、家が恋しい。
いつ元の世界に戻してくれるんだろう……。
まさか……もう家へ帰す気は無いのだろうか?
それともこの世界で死ねば元の世界に戻れるのか?
でも自ら死にに行くなんて怖くて出来ない。
俺……あいつに何をしたんだ……。
聞きたいこと、言いたいことは山ほどある。
「山田……ごめん」
夜空を見上げてよくわからないけど山田に謝ってみた。
「ソータ?どうしたんだ?1人でいると危ないぞ?」
後ろから声をかけられ、肩にマントを掛けられる。
「ありがとう、ギーナ。ちょっと夜風に当たりたかっただけだから」
強くて、優しくて、真面目で、良い男……だけど………
「こんなに冷えてしまって……」
凛々しい顔をでろっと崩して俺に頬擦りをしてくる。
ホモだ。
直接言われた事は無いが、他の仲間にはそんな事無いのに俺に対してはセクハラがひどい。
ギーナとの出会いは、この世界に放り込まれてすぐの事。
最初の草原で、理解が追いつかず呆然と立ち尽くす俺は、速攻魔物に襲われた。
魔物に追われていたのを助けてくれた冒険者チームのリーダーだ。
近くの街まで送ってくれると言う。
ここが何なのか、この人達が良い人なのか悪い人なのかも分からないが……。
1つだけ分かる事がある……ここにいたら死ぬ。
助けて貰うお礼に、何が出来るかわからないけど雑用係を申し出た。
俺を襲って来た魔物。
でっかいイノシシのバケモノみたいなそいつを夕食用に捌き、そのままここで野宿と言う話になり。
あまり見たくないなぁ……と背を向けようとしたが……。
『スキルチュートリアルモードに突入しました』
頭に機械音声が響いて……
いやだ、触りたくないと拒絶しようとするのに、体が勝手に動く。
来た時に装備していた小さなナイフを取り出すと……あっという間に解体してしまった。
手に残る肉の感触や血の温もりが気持ち悪い。
「す……スゴいじゃないか!!こいつは皮が厚く解体は慣れているものでも手こずるのに!!」
手放しで褒められる。
俺のスキルのチュートリアル……。
山田の仕業か。
まだチュートリアルモードは続いているようで、亀の様に背負っていたタライを取り出し……服を脱ぎだした。
「ソ…ソータ!?…どうしたんだっ!?急に!?」
冒険者の皆さんが驚いてドン引きしている。
俺が聞きたい。
タライの縁を一度撫でると、水が湛えられる。
二度撫でると……お湯。
ああ…ちょうど良い湯加減……タライの中で湯浴みを始めた。
そうか……解体で血まみれになった体を洗いたかったんだね。
さっぱりして気持ち良い。
でもせめて人のいないところでやって欲しかった。
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