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君の世界の片隅で 第四話
皆さんの不審者を見る様な視線が痛い。
驚く皆さんを横目に、タライでザバザバと洗濯を始め、リュックの中から銀色の筒を取り出してボタンを押すと、カシャン、カシャンと変形して物干竿になったので、服を干す。
よし、洗濯完了!
……て、渇くまで服どうするんだよ……。
俺の体を覆い隠してくれる物は何も無い。
女の子がいなかったので助かった。
「あの……少し匂うかもしれないが……着ていてくれ………目に…毒だ」
冒険者さんがマントを貸してくれた。
毒って……何かすみません……。
体はまだ自由に動かないが、
「ありがとう」
お礼もそこそこに、裸にマントで料理を始める。
リュックから調理道具も調味料も、色々出て来る。
料理を作り、配膳して、後片付け。
鞄から裁縫道具を取り出すと冒険者さんに借りたマントのほつれを修繕する。
そしてようやく……
『スキルチュートリアルモードを終了致します』
糸が切れた様に体ががくりと崩れ落ちた。
疲れた……。
スキル……俺のスキル。
家事チート?………冒険者にあまり向かなくねぇ?
「解体の要領で敵と戦えよ!!」
俺の叫びに飯を食べていた冒険者の皆さんが一斉に振り返る。
よくもまぁ……こんな怪しいヤツが作った飯を食べれるものだ……。
すみませんと、頭を下げて隅に逃げる。
ふむ……この背負っていたリュックに何か良い物が入っているかも……。
山田と連絡を取れる道具とか、この世界から抜け出せる道具とか……。
とりあえず色々取り出してみる。
いろいろ、いろいろ入っていた………リュックの容量を無視して、際限なく物が出て来るので途中でやめた。
これ……マンガや小説だと割と知られちゃいけないスキルだ。
アイテムボックスとやらだ。リュックだけど。
「ソータ………」
急に声を掛けられて、飛び上がる。
この大量の荷物を見られてはヤバイ……。
「な……何でしょう!?」
真っ赤な顔をしたギーナが立っている。
「あの……飯……美味かった……ありがとう」
俺の腕では無いけれど。
「どういたしまして……」
ギーナはまだ、モジモジとしている。
まだ何かあるのだろうか……?
向こうで仲間達が頑張れ、頑張れと騒いでいる。
何を頑張るんだ?
「ソータ…出会ったばかりであれだが……俺は…俺は………」
モジモジして言葉が続かない。
「俺は……何?」
顔を覗き込むと
「っ!!!何でも無い!!!」
凄い勢いでどこかへ走り去ってしまった。
「……何だったんだ?」
結局ギーナが何をしたかったのか分からないけど、今のうちに出した道具をリュックに戻した。
この道具、とても便利な物達な様で、先程の物干竿。
原理は分からないが竿から温風が出ていて、短時間でカラッと乾いた。
早速、服に着替える。
洗剤は使ってないのに柔らかく、石けんの匂いがする。
貸してくれたお礼にマントを洗濯しておこう。
洗濯の終わったマントに顔を埋めてギーナは感動して、なんだかんだと皆の服を洗濯する事になった。
沢山並んだ洗濯物、服が綺麗になると気になるのは自分の体。
タライを貸してやると、順番に湯浴みを始めた。
長く冒険をしていると、なかなか体を清めたり、洗濯したりは出来ないらしく、俺のスキルをいたくお気に召したらしく。
仲間に勧誘された。
ここで断ると置いて行かれる危険があるので
「街についてから考えさせてもらっても良いかな?」
と、曖昧に濁した。
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