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君の世界の片隅で 第九話

開店前の店内。 店長は仕入れに出掛けていて、1人で掃除をしていると扉が開く音がする。 店長、戻ったのかな? 顔を覗かせると、入り口に黒いフードをかぶった男が立っていた。 「すみません、まだ開店前で……」 あれ……?扉って鍵を締めてたよな。 男はツカツカとこちらに向かって歩いて来る。 「男共に囲まれて随分と楽しそうだったなぁ……奏汰」 この声は……。 「………山田」 黒いローブのフードを外し現れた山田の顔は、最後に見た時と同じ様に、楽しそうに目が細められていた。 「な……何なんだよ……今さら………」 いっぱいあった。 言いたい事はいっぱいあった筈なのに……。 喉が詰まって言葉が続かない。 「行くぞ、奏汰」 「行くって……待って、店長達に別れを……」 引かれた手に抗う様に体に力を込めると、山田は振り返り、怒りを含んだ目で睨まれた。 「は?何?奏汰あいつに惚れてんの?」 「惚れ……?いや、御世話になったし」 山田の目がどんどん冷たい物に変わる。 「何をお世話されたの?昨夜も寄り添って歩いてたもんな……あの後、可愛がってもらったのか?」 何を言っているんだ……? 「俺はずっと寂しくお前を待ち続けてたのに……お前は逆ハーレムでお楽しみだったって訳か?」 掴まれた手首がミシミシと悲鳴を上げる。 「山田……痛い…離し…」 周りの景色がぼやけてフェードアウトしたかと思うと……見た事の無い部屋へ移動した。 薄暗い部屋には趣味の悪い椅子やらロウソクやらが置かれている……。 「仕切り直しだ……」 背中をドンッ!と押されて、床に倒れ込んだ俺を冷たい目が見下している。 「ふははははっ!!!よくぞここまで辿り着いた人間よ!!しかしそれもここまで……我の下で啼くが良……ふぐっ!!!!」 俺に覆い被さって来た山田の股間を思い切り蹴り上げた。 「――――くぅうぅうぅ…」 うずくまる山田の下から抜け出そうとすると足首を掴まれる。 「な……なにすんだよ……奏汰ぁ……」 「それはこっちの台詞だ!!いきなりこんな世界に放り込まれるし!!魔物に襲われるし!!やたら男につきまとわられるし!!こんな手のこんだ嫌がらせする程、俺の…事……嫌いだったのかよ……」 自分で言ってポロリと涙が溢れた。 「そ…奏汰!?」 股間を押さえてうずくまる山田を睨み付けた。 「こんな事しなくても、嫌いなら嫌いだって言ってくれれば良かったのに!!」 「嫌いなんて……」 「俺の気持ちがそんなに鬱陶しいなら放っておいてくれれば良かったんだ!!」 「鬱陶しいなんて……って、え?奏汰の気持ち?」 「俺がお前に惚れてんのが気持ち悪かったんだろ!?だからこんなホモだらけの世界に投げ込んでお前の事、諦めさせようとしたんだろ!?」 口に出したらもう止まらなかった。秘密にしていた想いを口に出してしまい、居たたまれなさに逃げ出そうとしたが、足を掴まれていて逃げれないのを思い出した。 「離せっ!!離してくれよっ!!」 その変に転がっていた訳の分からない物を手当り次第に投げつける。 「まっ…待って………待てって!!!」 暴れる体を山田に組み敷かれ、こんな無様な自分をこれ以上見られたくなくて……顔を隠したいのに腕の自由はきかない。 「落ち着け。奏汰……今言った事って……本当?」 隠して否定しても……今さらか。 侮蔑の目を向けられるのが怖くて、山田を見ていられなくて顔を背けた。 「……………好きでごめん」 「奏汰〜っ!!!!」 「んんんんっ!!!!???」 いきなり唇を塞がれた。 突然の事に固まる俺の唇に何度も啄む様なキスをした後、角度を変えて深い口付けと共に熱い舌が口内に侵入して来た。 恋心を蕩かされる様に、下心を暴かれる様に舌が自由に動き回る。 「んんっ…はっあぁ……山田……なんで……」 「奏汰……奏汰……すっげぇ嬉しい……やっぱこの世界作って良かったかも……」 山田の手がズボンのまで入り込み、俺のモノを掴んだ。 「あぁっ!山田ぁ……くうっ!」 「ごめん……いろいろ言いたい事、あるだろうけど……後で全部ちゃんと話すし、謝るから……今はやらせて?……他の奴が俺より先にお前に触れたなんて我慢ならない」 「え……?」 山田の熱を帯びた瞳に見下ろされる。 「捕らえた人間を蹂躙するのは魔王の特権……だよな……」 山田はニヤリと魔王の笑みを浮かべた。

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