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君の世界の片隅で 第十話

山田が土下座しているのを、ぼんやり見つめている。 「ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!!」 俺を非処女だと思い込んでいた山田は前戯もそこそこに無理矢理ねじ込んできた。 泣き叫んだ俺に山田はオロオロ動転しながらも、ひたすら謝りながらフィニッシュまで突っ走った。 まだ山田のモノが挟まっている様な気がする……。 訳のわからない内に失って感じる喪失感。 「初めてだったのに……」 口をついて出た言葉に、山田は華麗な後方宙返り土下座を決めた。 無茶苦茶でも愛が無くても山田に抱かれる事を最後には受け入れたのは俺だ。 「………もういい……もう良いから元の世界に帰してくれよ」 「それは、ごめん。無理なんだ」 これで家に帰れると思った俺に、山田はさらりと答える。 「な……何でだよ……」 山田に会えば元の世界に戻してもらえると思ってた。 「お前の世界の隅っこでひっそり無様に死んでいけってことかよ……」 「違う!違うよ!!この世界は俺がお前と愛を育む為に作ったんだから!!この世界の中心は奏汰だ!!」 「は?愛…育む?作った?」 何言ってんだ? 前から山田の発言はおかしかったが、ますますエスカレートしてる。 「そうだよ。運命的な出会いを演出しようと思って、お前の好きなゲームの世界を元に用意したんだぞ?お前が冒険者がいいって言うから魔王になって最初の街の近くでずっと待ってたのに全然現れないし!!冒険者なら魔王を倒しに行くもんだろ!?魔王に蹂躙される冒険者のシナリオ台無しだよ!!」 えっと……俺が悪いのか? 家事スキルしか無い奴が魔王を倒しには行かないだろ。 「最初の街にいるだろうと探しに行ったら、俺から逃げる様に三つも先の街にいるし、男達に囲まれて楽しそうに笑ってるし……それを見た時の俺の気持ち奏汰にわかる!?」 「……いや、わかんねぇ」 ギーナ達との旅。 街って遠いなぁと思っていたが、最寄りの街ではなかった様だ。 「俺が嫁にする筈だったのに!!俺が与えたチートなのに!!嫁チートで男引き寄せてさぁ!!」 癇癪を起こす子供の様にぷりぷり怒っている。 嫁チート? 家事チートじゃなかったのか……? 「……て、いうか……山田、何者?」 「俺?俺は……奏汰がいた世界の神……の弟神だ」 ドヤ顔で俺は神宣言される。 神?山田が? 「…………」 いつもの中二病か?でもこの世界の事とか考えると……。 「その顔は信じてねぇな……前の俺の世界が壊れちまったから兄貴の世界で新しい世界を作る為に力を貯めてたんだよ。信仰心が力に変わるんだけど……俺の言う事を誰も信じねぇから力が集まらなかったんだけど……」 あんな発言をしてればそりゃあ……誰も信じないだろう。 「奏汰の側にいるとすげぇ力が湧いて来てたんだよな……そうなると奏汰が可愛くて仕方なくなるじゃん?絶対新しい世界にも奏汰は連れて行こうと決めてたんだ!!向こうの人達の奏汰に関する記憶は消して来たから誰も奏汰の心配はしてない!大丈夫!」 大丈夫じゃない。 そこまで根回し出来るのに一言相談とか無いんだ。 「でも力の源が信仰じゃなくて愛だったなんてな……処女まで捧げてもらったし……処女ってすげぇ大事なもんなんだろ?」 山田は恥ずかしそうに頬を染めた。 ……はっきり言葉にされると恥ずかしい、俺も赤面する。 捧げたんじゃなくて、奪われたんだけど。 「でも……神様なら元の世界に帰してよ……」 「世界を作った事で力を使い果たした。異世界渡る力ない。もう無理」 山田はお手上げポーズを決める。 「そんなぁ……」 「力が残ってたとしても帰すわけないでしょ……この世界は奏汰と愛し合う為に作ったんだから」 耳元に寄せられる唇。 耳に吐息がかかる。 「俺のどこが好きだったの?奏汰の気持ち……ちゃんと聞かせて?」 顎を持ち上げられて、意思の強い瞳に射抜かれた。 「初めは、格好いいのに変な奴と思ってただけだったけど……だんだん目が離せなくなって……いつの間にか……変な発言も、変な行動も……俺にだけ見せる様になって……山田の中で俺だけ特別みたいで、嬉しかった…から」 「そうだよ。奏汰だけ…奏汰だけが特別……」 キスをされて……。 頭の中に機械音声が流れた……。 『嫁モード突入しました』

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