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SS② しゅきしゅきビーム

「なぁシャル、知ってるかァ?」 「ん?」  うららかな午後。  のんびりティータイムを楽しむ俺に、巡回帰りののほほんを摂取しにやってきていたガドが、突然そんなことを言い出した。 「しゅきしゅきビームを放つと、相手が俺のことをしゅきしゅきになるんだぜィ」 「しゅきしゅきビーム」  マヌケに反芻する。  なんともご機嫌なビームさんだが、俺とは初対面だ。  知らないと言うと、ガドは流行遅れだとしっぽをビチビチうねらせ、おもむろに俺に向かってピストルの形にした指先を向けた。 「しゅきしゅきビーム!」 「お、おぉう……!」  銀髪長身イケメンのキメ顔と低く甘えた声で放たれる、しゅきしゅきビーム。  実際はなにも放たれていないのに、俺はなんだかなにかをモモモモーンと食らってしまった気がして、胸を押さえた。 「な? 俺のことがしゅきしゅきになっただろォ?」 「うん、うん。なったぞ。凄いな、ガド。ビームが放てるなんて」 「クックック。空軍の三バカがこれで遊んでたから、こっそり覚えておいたんだぜィ」  ガドはドヤ顔だ。ご機嫌にニマーと口角を上げる。 「そんで、俺は今からこれを魔王に放ちに行こうと思ってるんだよなァ」 「名案じゃないか」  ピストル型の指先をフッ、と吹くガドに、俺はパチンと指を鳴らして肯定した。  アゼルはいつでもガドがしゅきしゅきだと思うが、改めてビームを放ったっていいだろう?  素直じゃないアゼルが弟分に甘えるいい機会じゃないか。応援する気しか湧いてこない。  仕事の邪魔をするのは良くないけどな。  ほんの少しくらいなら、息抜きになると思う。うん。問題ない。忙しそうなら退散すればいいからな。 「そうと決まれば執務室へ急がねば。行こう、ガド」 「おうさ」  俺とガドはコックリと頷きあい、執務室を目指して歩き出した。   ◇ ◇ ◇ 「しゅきしゅきビーム!」 「…………」  やってきました執務室。  書類仕事をしていたアゼルとライゼンさんに挨拶をしてから、おもむろにガドがビームを放つ。  けれどアゼルは眉を歪めて「あぁ?」と言わんばかりのしかめっ面となり、無言で突き出された指先を見つめるだけだった。  んん、おかしいな。  モモモモーンとしたホットななにかに包まれて、ガドはかわいいやつだな、という気分になってしまうはずなのだが……。 「シャルさん。ガドは魔王様に、いったいなにをしているのですか?」 「ライゼンさん。あれはしゅきしゅきビームだ。ガドがあれを放つと、放たれた相手はガドがしゅきしゅきになるビームだな」 「えぇと……好き好き、ではなく?」 「ん。しゅきしゅき、だ」  大きな違いである。  ガド曰く「好き好きビームは効かねぇぜ~」とのこと。たぶん大事な要素なんだろうな。  そう説明すると、ライゼンさんはガックリと項垂れて「空軍長官にもなって、あの子はなんておバカなお遊びを……!」と嘆いた。楽しいお遊びだから大丈夫だ。 「……新しい魔法の呪文か?」  そうこうするうち、ビームを放ってから黙って見つめ合っていた兄弟の沈黙が、兄の疑問で破られた。 「ノンノン。俺のビームはまったりのほほんでほっこりホットなラブに満ちたビームだからなァ」 「お前の言っていることがわからねぇ」 「てーか魔法なら魔王でも使えるんじゃねえの? 使ってみろよォ」 「しゅきしゅきビーム」  ガドに言われるがまま、ビームの呪文を唱えてみるアゼル。だが、魔法ではないのでなにも放てない。

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