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1.銀のオメガ

「狼を撃てぇ」 「回収屋を片付けろ」  血に濡れた武器を振り翳した男達が叫んでいた。  逃げているのは狼と少年、そして銀に輝くモノだ。  遠くからそれを見たリースは愛馬を駆けさせた。狙いは「銀の輝き」だ。争いに飛び込み、横から獲物を掻っ攫うつもりだった。 「逃げてぇ!」  少年の絶叫が朝日に照らされた空に響いた。  その声に押し出されるように漆黒の塊が争いの中から飛び出した。紅の瞳と純白の牙を光らせる狼だった。その背中に銀の輝きが乗っていた。 「オメガを逃がすな!」  男達の怒号が悲鳴に変わった。  どさくさに紛れて宝を掻っ攫ったリースは馬上からフフンと笑って言った。 「いいモノを拾った。欲しいなら奪ってみろ」  燃え盛る炎のような短髪を揺らしながら、黒の革衣をまとったリースは馬上から男達を挑発した。リースが掠め取った「銀の輝き」は華奢な「男のオメガ」だった。 「取り返せぇ」  男達の標的がリースに変わった。  少年と狼を放置し、リースが跨がる黒馬を取り囲んだ。タイミングを図り、一斉に飛びかかって奪い返そうというのか。しかし、全員の額に冷や汗や脂汗が浮かんでいた。  リースは笑った。 「止めておけ。ヴァンパイアでも俺は倒せない」  リースは見せ付けるように、腕に抱いたオメガの額に口付けをした。いい匂いがする。 「最高の貢ぎ物――ヒートが近いオメガ――を奪われた!」 「村は終わりだ!」 「で、でもハンターだ!」  動揺する男達の様子をリースは面白そうに眺めていた。 「『バース』だ! ヒートじゃない! 犬や猫みたいに扱うな」  ざわつく男達の向こう側で、少女のような顔をした少年が服に付いた土埃を払いながら怒りの声を上げた。  漆黒の狼が少年に寄り添う。  短剣を握りしめた少年は自分よりも大きな狼の背に軽やかに跨がった。 「オメガを守り、導く者――回収屋――か」  リースはフフンと笑うと、腕の中のオメガに唇を押し付けた。  オメガは魔性の気を纏っていた。  子を宿せる時期「バース」が近いオメガが放つ誘惑の気は強烈だ。本格的なバースになった姿を想像するだけで絶頂に達せそうだ。リースは男達と回収屋の少年&狼に背を向け、馬の腹を蹴った。 「オメガは俺がもらう。文句があるなら血と心臓を捧げろ」  リースの首にオメガの腕が巻き付いた。  素直に攫われる素直さに気分を良くしながら、リースは森の奥を目指した。
作者
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