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5.ハンター

 黒い馬から闇が氷の上に立った。  氷に飲み込まれていく村の中心に立った禍々しきハンターが両手を掲げた。  森を抜け、山に続く獣道沿いにあった村で夜を迎えたリースは襲い来る氷の前に立った。今宵、いくつの村が氷河の下に沈んだだろう。それもこれまでだ。  姿が見えない闇の領主に聞かせるため、リースは吹雪でかすむ銀の満月に向かって咆哮した。 「光よ、退け。闇よ、憑け。この身に眠る呪われた血よ、その欲望を解き放てぇ!」  あぁ、見よ。  ハンターが巨大な鴉の翼を負っているではないか。  翼から放たれる漆黒の羽根が、刃となって襲い来る亡者共を打ち砕いていく。  それだけではない。  ハンターは大木のような白蛇の体を持つ悪魔を侍らせているではないか。  蛇の骨で作られた剣を両手に持ち、悪魔を伴ってハンターが吹雪の向こうへ突き進んでいく。 「全ての闇よ、あるべき世界へ戻るがいい! もしくは、俺の血肉になれ!」  魂を啜り、腐敗した血を飲み干しながらリースは駆ける。悪魔の翼で吹雪を切り裂き、氷山の頂き立つ城を目指すのだ。 「き、鬼人だ」  村人が呟いた。  鴉の翼なのに、凍り付いた家の壁に写るソレは禍々しいコウモリの翼だ。鏡には写らない翼を負い、悪魔を従えてヴァンパイアを狩るハンター。 「違う。奇神だよ。オメガが産んだ、ヴァンパイアの子孫」  少年が村人に教えた。  黒狼の背に乗って呟いたハーブはズキズキと痛み、血を流す頭を抑えながら唇を噛みしめた。  協会で司祭達が彼を恐れ、幼い彼の首に十字架の烙印を押した理由がそこにあった。  限られた者だけが知る噂の答えを見たハーブは、その決意を硬くする。 「僕はまたスターリィを守れなかった。村人の武力に負け、女の芝居にダマされ、吹雪に阻まれて! でも僕は……」  ハーブは小瓶に入った薬を飲み干した。自分の戦闘能力を高める薬だ。薬師の特権といえるだろう。狼の毛を握りしめたハーブは吹雪に向かって叫んだ。 「今度こそ、スターリィを守る! 回収屋の名にかけて!」  ハーブの決意に狼が答えた。 (急ごう。スターリィが闇の領主の子を宿したら……命はない)  頭に響いた狼の言葉に、ハーブは力強く応えた。 「それは絶対に、ない! この僕が阻止する!」  力強い答えに、黒狼は咆哮を上げた。

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