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19話/たいが

ムク犬にメットを渡し、後ろに乗るように促す。…が、全然動こうとしないし、なんだかぴるぴると震えてる…? 「どうかした?」 「しっ、宍倉くん…僕コレに乗らなきゃ…ダメ…?」 うっ!またデッカイ目がウルウルしてやがる、何でだ!? 「僕…、バイクなんて乗った事なくって…」 小さな声でぽそぽそ話すムク犬。あ〜、要するに… 「怖い?」 ちょっと間を置いてから、コクリと頷く。あ〜、そっか。自分の周りは乗り慣れてる奴らばかりだし、女共は争って後ろに乗りたがるから怖がるって考えを失念してたな…。 デカイバイクっつっても中型だし、俺からしたら原付に毛が生えた程度の感覚だったが、ちっこいムク犬にしたら、充分デカく感じるのかもなあ。 …っと、またちっこいなんて言ってムク犬の地雷を踏まないようにしないと、怖がらせた上に機嫌を損ねたら帰っちまうかも知んねえ。 さて、どうしたもんか…。 「そっか、初めてなら確かに怖いかも知れないね。でも、河合って運動神経いいでしょう?きっとバランス取るの上手だと思うんだよね」 取り敢えず、恐怖心が消えるような事を言ってみる。 「体育の授業でも身軽に動くでしょ?バイクのタンデムなんて、河合なら軽くこなせると思うんだけどな〜」 恐怖心を和らげた所で、今度は持ち上げてみた。 「それに、バイクで風を切るのって凄く気持ちいいし河合にも味あわせてあげたいなあ」 実際今日みたいな天気なら、絶好のツーリング日和だしな。 そこまで喋ったところで、ムク犬が俯かせていた顔を上げ、キラキラと目を輝かせながら言った。 「ぼっ、僕…乗ってみるっ!」 よっしゃー!成功だーっ!

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