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31話/たいが
こてん、と首をかしげ熱っぽい目で俺を見つめ
「お願い…聞いてくれる?」
なんて言って来た…、ま…さか誘…ってる、…のか!?いやいやいや、相手はムク犬だぞっ!?冷静になれ俺っ!
そりゃムク犬は可愛いさ。ぐりぐり撫で繰り回したいと思っているさっ。けどそれは愛玩動物を愛でるような意味で、決してアレ的なソレではないっ…ハズ。
だが今目の前のムク犬は、いつものぽやぽやしたムク犬とは思えない艶っぽさがあっ…て…。
ごくり…。
思わず生唾を飲み込み、ムク犬を見つめ返す。
「お願い…って…なんだ…?」
やべ…、声がうわずっている。
「ん…あのね、僕…宍倉くんの………が欲しい…の」
おっ、おお…俺が欲しいだとーーっ!?なななっなにを…、ナニを言ってるんだーーっ!ムク犬ーっ!!
いやいやいやまてまてまて俺っ!ムク犬は酔っぱらっているんだ。
「…宍倉くん?…駄目?」
さらに目をウルウルと潤ませ小首をこてん、と傾げて。
「…おねがい…きいて…?」
なんて…。これは…据え膳なのか…?そうだなっ!据え膳を食わないなんて男じゃねえよなっ!
「…わかった。じゃあ部屋を取るからフロントに行こう?」
「ふえ?なんれぇ…?」
「河合のお願いを叶える為だよ…?」
「ほんとう?宍倉くんお願い聞いてくれるの…?嬉しい〜っ。やっぱり宍倉くんはジェントルマンなんらねぇ」
…ん?この流れで、なんでジェントルマン…?
「でもいくらみすたーぱーふぇくとの宍倉くんでも、無理なお願いらってわかってるから、だいじょうぶらよおぉ…」
いやっ!そんな事ねえぞ?正直、ムク犬の飼い主になりたいと思ったのは、珍しい動物を自分だけの物にしたら、愉しそうだと思っていたからだ。飼う以上はちゃんと可愛がるし、大事にするつもりだったが、それはあくまで愛玩的な意味合いだった。
けど、今日こうしてムク犬と話をして、くるくる変わる表情や意外としっかりとしている所を知った。見掛けは小動物でも、ムク犬は河合椋と云う大人としての一面も持つ、一人の少年なんだと認識を改めさせられた。
そして今、目の前にいる艶を含んだ椋を見てたら…。
女に言い寄られても常にクールな俺のソレが、臨界点を簡単に突破しそうな気配だなんて…。
マジかよ…!
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