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34話/むく

宍倉くんの瞼が開いて、綺麗な紅茶色の瞳が僕を見上げた。 「ん…何時?」 慌てて辺りを見回すと、ベッドサイドの時計が五時二十分を示していた。 「ご…ごじ過ぎだよ?」 今の状況に戸惑う僕とは対照的に、普段通りの宍倉くん。 「二時間くらいかあ、結構寝たね。頭は痛くない?」 …頭? 「う、うん」 「そう良かった。喉は渇いてない?何か取ろうか?」 「あ、あの宍倉くん。…どうして僕達こんな所にいる…の?」 おそるおそる尋ねる。 「どうしてって…、河合のお願いを聞いたからだけど?」 …僕のお願い?…え?僕何か言ったっけ…??そう言えば、デザート食べてた辺りからの記憶がない…。嘘…っ、どうして…? 「…もしかして、覚えてない?」 「ぼ、僕なにかしちゃった…?」 何をしたの僕、何があったの?どうして覚えてないの…?不安で泣きたくなってきた僕の頭に、ふわりと何かが触れる感触がした。 顔を上げると宍倉くんが、大きな手で僕の頭を撫でながら、優しい眼差しで見ていた。 「大丈夫、何も変な事なんてしていないよ。ホラ、河合サバラン結構食べたでしょ?あれに入ってたキルシュに酔っちゃったみたいだね」 サバラン…!あ、あれお酒が入ってたんだ。全然気付かなかった…。パティシエを目指す者としてそれって情けないよ。 「それで河合が寝ちゃったから、部屋を取ったんだよ」 自分の情けなさに落ち込む僕に、耳を疑う事を宍倉くんが言った。 「…え、部屋をとったって」 さっき宍倉くんは、僕のお願いを叶える為とかって言わなかった?まさか僕、ここに泊まりたいなんて言ったりしたんじゃ…。 このお部屋って、テレビとかで観て一度は泊まってみたいねって、よくいっくんとにこちゃんと話したりしてた、スイートルームってお部屋なんじゃ…。 確か滅茶苦茶値段が高いんじゃなかったっけ…?どっ…どうしよう!僕お金ちょっとしか持ってきてないよ。 たとえ宍倉くんが噂通りにお金持ちのお家の人だとしても、宍倉くんに出して貰うなんて絶対ダメ! どうしたらいいの…?

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