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36話/むく

この部屋を取ったのは、僕のせいじゃないって宍倉くんは言ってくれたけど、僕に気を使わせない為なんじゃないかって、思えてしょうがない…。 宍倉くんは嬉しいお願いって言ったけど、一体僕は何をお願いしちゃったんだろう。不安で堪らない僕に、宍倉くんが躊躇いながら聞かせてくれた。 「河合がね…、欲しいって言ってくれたんだよ…。その、俺の事を…」 …え? 欲しい?何を?俺のことを欲しい…。 オレノコトヲホシイ……。 ししくらくん…が、欲しいってコト…? はああああああああーーーっ!? えっ?え?訳わかんないっ?何を口走ったのさ僕っ!なんで、そんなヘンな事を言っちゃったのお〜っ? 「ぼぼぼ…僕っ!本当にそんな事言ったの…?」 「…あ、ああっ確かに俺の何とかが欲しいって…」 ああああああ……僕の馬鹿っ!!一体宍倉くんの何が欲しかったって言うのさあ〜。 そりゃあ宍倉くんは、僕にないものばかりを持ってる人だよっ。でもだからって人様の物を欲しがるなんて浅ましいよ僕…情けなさMAXだよ…。 たっ確かに…、出来るなら背丈をちょこっとでいいから分けて欲しいって、常日頃思ってたりするけど…。 …ん? あれ…そう言えばボンヤリと思い出してきたような…。 美味しいお料理とデザートと、それに宍倉くんとのお喋りがスッゴく楽しくって、ふわふわ〜って気持ち良くなっちゃた僕は確かに言った…。 『あのねえ…僕、宍倉くんにお願いしたい事があるんだあ〜』 『お願い…聞いてくれる?』 『ん…あのね、僕…宍倉くんの………が欲しい…の』 …きっゃああああぁーーっ!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿僕の馬鹿っ!! 恥ずかしいっ恥ずかしいっ!!恥ずかし過ぎて死んじゃうよう〜っ!! 「か、河合…思い出した?」 よみがえった記憶にもんどり打つ僕に、そっと宍倉くんが聞いてくる。…思い出しました…。出来たら、死ぬまで思い出したくなかったけど…。 思い出した以上、ちゃんと正直に話さなきゃいけない。これだけ迷惑かけちゃったんだから、せめてそれくらいの誠意は見せなきゃ…。 「…うん、思い出しました」 「ほ、本当に…っ?」 はあ〜、宍倉くんに呆れられちゃうだろうなぁ。でも勇気を出してちゃんと言わなきゃ…。

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