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41話/たいが

現れた士狼が素性を明かすと、驚いた様子のムク犬だったが 「あっ!じゃああのチケットって総支配人さんから頂いたものだったんだね」 そう言って確かめるように俺を見てきたので、頷いて応える。 「うわ〜っ、ありがとうございます。おかげでスッゴく美味しいお料理とスイーツを食べれましたっ」 「いえいえ、ご満足頂けて何よりです。レストランのスタッフも喜んでおりましたよ」 士狼に向かいペコリと頭を下げるムク犬に、士狼がそう返す。 「え?」 「とても美味しそうに食べて頂けたと皆が話していたそうです。ですので、デザートに酔われたようだと伺って心配しておりました」 確かに店を出るときフラフラしてたもんな…、だが何でそんな話が士狼の耳にまで届いてんだよ。 「心配をかけてすみません。宍倉くんがお部屋で休ませてくれたので、もう治りました。…でも、それで宍倉くんに迷惑かけちゃって…、ごめんなさい」 「だから迷惑なんかじゃないってば」 また謝ってくるムク犬に、押し問答のようになる。 「でも、僕のせいなのは変わらないからお金は払わせて欲しいよ」 なかなかムク犬も譲らない。きっとちゃんと育てられたんだろうなあ…、ムク犬の礼儀正しさを見てたらそう思った。 「失礼ですが、部屋代でしたら当方にも責任がございますし、サービスと言う事でお受け取り頂きたいのですが」 ムク犬と揉めていると、営業モードの士狼がそう言ってきた。 「ええっ?そんなの駄目ですよ!酔っちゃったのは僕の不注意なんですから、ホテルは悪くありませんっ」 「では総支配人としてではなく、大雅の兄としてサービスさせて頂くと言うのはどうですか?」 「え…」 「私と大雅は、従兄弟と言うより兄弟のようなものなのです。兄が弟のご友人をもてなすのだから、気兼ねなどしないで、ねっ?」 またニッコリと極上の営業スマイルを見せながらも、幾分気さくに話し掛ける士狼に、ムク犬は頬を赤らめて、でもとか、だって、と言いながらも結局頷いた。 ちっ、なんだか面白くねえ…。

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