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44話/むく
にこちゃんに電話を入れて(お金の事はなんとか誤魔化した)バスルームの扉を開ける。ふっ、ふわわ〜っ!脱衣室だけで家の玄関より広いよう〜?
ちゃんと別にシャワーブースがあるけど、せっかくだからお風呂が見たいなあ…。なんて思って扉をまた開けると、そこには広々した浴室とその向こうに広がる一面の夕景があった。
すっ、すっごい〜!!何コレっ!?むちゃくちゃ綺麗〜っ。
お風呂場は一面の大理石にゴージャスな装飾が施されてて、凄いロマンチックな雰囲気だ。シャワーで済まそうって思ってたけどこれは入りたい〜っ!
ボタンを押したらあっという間に浴槽にお湯が溜まっていくので、その間に軽く体を洗ってからたっぷりのお湯の中にじゃ〜んぷ!お行儀悪くてごめんなさいっ。
はあ〜気持ちいい〜っ!至福のひとときってまさにコレだよねえ…。極楽極楽〜なんちゃって!
ああでも今日は本当に不思議な一日だったなあ。
クラスの…ううん、学校の人気者の宍倉くんと一緒にお出掛けして、頬っぺが落ちそうなくらい美味しいお料理とスイーツを食べて、今まで泊まった事のない高いお部屋のふかふかのベッドでお昼寝までしちゃうなんて。
るんるん気分で入浴を楽しむ僕の目に、お湯が注がれてるライオンの蛇口が留まった。
…らいおんさん…。
ああ、でも宍倉くんには迷惑掛けちゃったなあ。まさかケーキを食べて酔っ払っちゃうなんて思ってなかったけど、僕って酔うと困った人になっちゃうんだ。
でも、こんな僕に怒るどころか逆に気遣ってくれた宍倉くん、本当にいい人だよね。お友達になって貰えたら嬉しいけど、僕と宍倉くんじゃせいぜい飼い主とポチがいいとこかも…。
でも今日のお詫びにポチに出来る事ならなるたけ頑張ってやろうっと!宍倉くんの委員長の仕事を手伝ったりとか、雑用くらいなら僕だって出来るよねっ。
グッと握った拳を挙げて気合いを入れる。そうと決めたら、今はこのお風呂を満喫しようっと。思いっきり手足を伸ばし、ライオンの蛇口から溢れるお湯を見つめてると、士狼さんの顔を思い出した。
宍倉くんに似ていて、やっぱり紳士で素敵な人だなあ。そのうえこのホテルの総支配人さんだなんて…、って事は宍倉くんも、宍倉グループと関係があるって事なのかなあ。
でもあんまり聞かれたくないみたいだったし…うん、気にしないでいよう。もっと仲良しになれたら、教えてくれるよねっ。
…そう言えば目が覚めた時、驚いてすっかり忘れてたけど、僕の横に宍倉くんも寝てなかった…?
お湯に浸かりながら、しばらく思い出そうと頑張ってみる。お昼寝から目が覚めて、瞼をゆっくり上げたときに僕の目に映ったのは、確かに宍倉くんの端正な顔だった。
閉じた瞼を縁取る長い睫毛、形のいい眉、高くてすっと通った鼻、すこし薄めの唇、すべてのパーツがシャープな輪郭の中にバランスよく配置されている美術品みたいな顔…。
そんな宍倉くんの顔が、目覚めたときに目の前にあったって事は、まさか…。
僕、宍倉くんと抱き合ってたっ!?うそでしょーーっ!!
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