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47話/むく

「むーくん起きて」 ぺちぺちと、僕の頬っぺを叩く音がする。 「起ーっきーてってばあ」 ううん…、もうちょっとだけ〜。 「もうっ起きなさい〜!遅刻しちゃうよ」 がばっ、としがみついてた毛布が捲られて、コロリと転がる僕。 「ひどいよ〜にこちゃん」 「ひどくなぁい。ホラ時計見なさい」 そう言って目の前に差し出された時計の針は、7時20分を指していた。 「きゃあ〜っ!遅刻しちゃう〜っ」 「だから言ったでしょう?」 慌てる僕とは反対に、ゆったりと喋るにこちゃん。 「ああん、ご飯食べる時間なくなっちゃうよう」 急いで着替え始めた僕を、じーっと見つめたままのにこちゃん。 「にこちゃん…、恥ずかしいんですけど」 「うん、あのね。お友達がお迎えに来てるから急いでね」 僕の言葉を華麗にスルーしたにこちゃんが、変な事を言ってきた。 「え?お友達?」 誰だろ…。真央くんとは通学路が別々だし、思い当たる人がいない。 「そう、昨日むーくんを送って来てくれた男の子。ちゃんとお礼言いなさいね?」 昨日…?…あ、僕…昨日どうやって帰って来たんだっけ? 寝呆けた頭を動かして思い出す。宍倉くんとホテルビュッフェに行って…、ご飯食べて…、僕がケーキに酔っ払っちゃって…。 …あれ?僕、たしかお風呂に入ってなかったっけ? なのに、なんでお家に居るの?どうして自分のベッドで寝ていたのかな…。 「…にこちゃん、僕昨日どうやって帰って来た…の?」 「カッコいい男の子が送って来てくれたよ?私の携帯に連絡があってね、むーくんが眠っちゃったから家まで送り届けますって」 「えええーっ!」 「むーくんずっとすぴすぴ寝ちゃってて全然起きなかったけど、気にした様子もなくって自分が付き合わせたせいで疲れさせたからって、私達に謝ってくれてね」 …ぼ、僕…どれだけ宍倉くんに迷惑掛けたの…。 「その子がお迎えに来てくれてるから、早く支度しなさいね?」 は…い?お迎えって…まさか宍倉くん…なの…? こ…っ、これだけ迷惑掛けまくって、一体どんな顔して会えばいいって言うのさあ〜っ!逃げ出したい…。 「うふふ…むーくん。逃げたりしたら、どうなるか分かってるよね?そんな礼儀知らずな真似は、お姉ちゃん許さないわよ〜」 にっこりと菩薩さまの微笑みを浮かべるにこちゃんの後ろに、おっきな般若が見える…。 どうやら逃げ場はないようです…、くすん。

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